妊婦さんへ

双胎妊娠のキホンとそのリスク

こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。

今回は双子ちゃんの記事です。

ひとえに「双子」といっても、色々な種類があることをご存知ですか?
そしてその種類によって、赤ちゃんやお母さんのリスクが違うってご存知ですか?

近年の不妊治療の進歩とともに、双胎の割合は増加しています。
お腹の中に複数の命を抱えるというのはとても素敵なことなのですが、リスクもたくさんあるんです。

今回は双胎妊娠の基本についてご紹介していきたいと思います。

1. 双胎の3つの種類

  1. 絨毛膜羊膜双胎(DD twin)
  2. 絨毛膜羊膜双胎(MD twin)
  3. 絨毛膜羊膜双胎(MM twin)

リスクが高いのは③>②>①の順

2つ以上の胎児が同時に子宮内に存在することを多胎といい、2児の場合は双胎といいます。

双胎は「赤ちゃんの部屋が1つか2つか」「胎盤が1つか2つか」によって、3つの種類に分けられます。

妊婦健診では、妊娠8〜10週で膜性診断を行い、どれに当てはまるのかを診断しています。どの双胎かによって管理方法も異なってくるため、正確に診断を行うことが重要です。

もし初期に診断ができなかった場合は、胎児の性別が異なれば原則的に二絨毛膜双胎と言えますが、性別が一致した場合は判別ができないため、臨床上は一絨毛膜双胎として管理します。

1. DD双胎

二絨毛膜二羊膜双胎(dichorionic diamniotic twin;DD twin)は、胎盤もお部屋も2つある双胎です。双胎の約70%を占めます。

一卵性の場合も、二卵性の場合もあります。
そのため、双子と言っても性別や血液型などは異なることもあります。

それぞれの赤ちゃんがそれぞれの胎盤、お部屋を持っているので、栄養や酸素などを奪い合うようなこともありません。

双胎の中では最も予後良好なタイプです。

2. MD双胎

一絨毛膜二羊膜双胎(monochorionic diamniotic twin;MD twin)は、お部屋は2つあるけど、胎盤は1つを2人で共有しているような形の双胎です。双胎の約29%を占めます。

原則一卵性双胎であり、性別や血液型・ゲノムは両児で同一となります。

胎盤を共有している分、血液分配の不均衡が生じたり、双胎一児死亡の割合が高くなります

双胎の中では中リスク群とされます。

3. MM双胎

一絨毛膜一羊膜双胎(monochorionic monoamniotic twin;MM twin)は、お部屋も胎盤も1つしかない双胎です。双胎の中でも約1%と、頻度は低いです。

一卵性双胎であり、性別や血液型・ゲノムは同一。

MD双胎同様、血液の分配の不均衡や双胎一児死亡などを合併しやすい他、2人のへその緒が絡みあう臍帯相互巻絡による血行障害などの異常も多く、非常に慎重な管理が求められます。

双胎の中で最も予後不良のタイプです。

2. 起きやすい産科合併症

お腹の中で2人を育てるということは、単純計算、妊婦さんの身体に2倍の負荷がかかるということ。そのため、母体にも胎児にも色々な合併症が生じ得ます。

1. 母体合併症

<母体合併症>

  • 流産
  • 早産
  • 母体貧血
  • 妊娠糖尿病
  • 妊娠高血圧症候群
  • HELLP症候群
  • 羊水過多症
  • 血栓症
  • 弛緩出血

子宮の中に赤ちゃんが2人いる分、子宮は更に大きく引き伸ばされ、子宮収縮が起こりやすくなります。
収縮が抑えきれないと、早産で分娩に至ることもあります。

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一方、身体の中を循環する血液量も増えるため、母体の循環・腎機能に過度な負担がかかり、妊娠高血圧症候群HELLP症候群、母体貧血などを生じやすくなります。

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また子宮の壁の過伸展のために、分娩後もうまく収縮が出来なくなり、弛緩出血に至ることも多いです。

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2. 胎児合併症

<胎児合併症>

  • 胎児発育不全
  • 胎児構造異常(奇形)
  • 胎位異常
  • 子宮内胎児死亡
  • 双胎間輸血症候群(TTTS)

一方、胎児の合併症としては上記が挙げられます。

最も頻度が高いのは胎児発育不全。単胎と比べると、赤ちゃんは少し小さめに発育することが多くなります。

胎児の構造異常(奇形)の合併率も増加するので、適宜スクリーニング検査などを追加しながら管理していきます。

3. “一絨毛膜双胎”特有のリスク

医師

一絨毛膜双胎(MD双胎・MM双胎)に特有のリスクというものがあります。
その代表が双胎間輸血症候群(Twin-to-twin transfusion syndrome;TTTS)です。発症頻度は約10%と高率です。

共有している胎盤の吻合血管を介し、赤ちゃんに送る血液量の不均衡が生じることによって、循環不全を呈する症候群。

簡単にまとめれば、「片方の赤ちゃんに送られる血液量が多くなり(多血)、もう片方の赤ちゃんに送られる血液量が少なくなる(貧血)」疾患と言えます。

・多血児▶︎高血圧、羊水過多、心不全、胎児水腫
・貧血児▶︎低血圧、羊水過少、腎不全、胎児発育不全

このように、両児で異なる合併症を発症します。
多血の場合も貧血の場合も、進行すると胎児機能不全につながり、最悪の場合は死に至ります。

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一絨毛膜双胎の片方の児が子宮内胎児死亡を生じた場合(頻度:2〜4%)、もう片方の児にも重篤な影響をもたらします。
脳障害をきたしたり死亡したりする頻度も高いです。

胎盤を共有しない二絨毛膜双胎の場合は、双胎一児死亡が起きても生児への影響は少ないため、こういった点でも一絨毛膜双胎のリスクの高さが伺えるかと思います。

4. 管理方法や分娩様式は?

管理方法は施設差があると思いますが、その一例を提示します。

  • 妊娠8〜10週:膜性診断
  • 妊婦健診で1〜2週間おきにフォロー
  • 羊水量両児の発育差がないか確認
  • 切迫徴候や血圧上昇、高血糖などに注意
  • DD双胎:必要に応じて34週頃から管理入院
  • MD双胎:必要に応じて32週頃から管理入院
  • MM双胎:24〜26週頃から管理入院(必須)
  • DD/MD双胎:妊娠37〜38週で分娩(経腟分娩or帝王切開)
  • MM双胎:妊娠32〜34週で帝王切開分娩

双胎の種類によって、管理方法も分娩方法も様々であることがわかるかと思います。

特にMM双胎は臍帯相互巻絡などの周産期リスクが高く、子宮内胎児死亡例も多いため、早産期に帝王切開を行って分娩にすることが多いです。

5. 双胎の経腟分娩

双胎の分娩方法を帝王切開にするか、経腟分娩にするか。
これについては担当医と相談しましょう。ただ、経腟分娩を行うにはいくつかの条件があります。

私の施設でも双胎の経腟分娩を行っていますが、次のような基準を全てクリアした人のみを適応としています。

  1. 先進児が頭位(頭が下)、後続児の胎位は問わない
  2. 妊娠32週以降
  3. 両児とも1500g以上

双胎の経腟分娩で怖いのは、先進児が出た後の後続児の管理です。
高頻度で心音が低下するので、その回復が乏しければ後続児ためだけに緊急帝王切開術が必要になることもあります

また、先進児が産まれた影響で子宮内のスペースが相対的に広くなり、容易に胎位が変化したりもします。
骨盤位分娩になる場合は、その手技に熟練した産科医の立ち会いが必須です。

帝王切開分娩の方が児へのリスクは低いと考えられますが、例えば母体の合併症などの影響で帝王切開を避けた方がメリットが高い患者さんというのもいらっしゃいます。

ぜひメリット・デメリットを考慮しながら、担当医と検討してみて下さい。
(双胎は全例帝王切開としている施設も多いかもしれませんが…。)

今日は双子の妊娠についてまとめました。
2人の命を抱えるだけでも大変なのに、様々な合併症やリスクがある双胎妊娠。その奥深さについて、少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

多胎妊娠の妊婦さんをただただ尊敬する日々です。

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ゆき
◆ 医師(産婦人科) ◆ 県立女子高校→地方国公立医学部 産婦人科医の視点から、正確でわかりやすい情報をお届けします。 twitter:@yukizorablog_Y Instagram:yukizora_yuki
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