東大関連

東大と医学部のどっちを目指すべきか

天秤

先日読者の方から以下のような質問を頂きました。

今回はかなり具体的な内容となっています。私はこれまで、沢山の後輩たちの相談に乗ってきましたが、このような悩みを持っている方は意外に多い印象です。

医学部に興味はあるけれども、最高学府である東京大学に行きたいという気持ちもあるというのは、よく理解できます。実際に、理2→東大医学部ルートの可能性も視野に入れ、東大に入ることを検討している受験生も私の周りにいました。

そこで今回は、「東大と医学部のどっちを選ぶべきか」について考察しようと思います。

1. 前提条件の確認

今回の議論をする前に、まずは前提条件を設定しようと思います。というのも、質問者さんの状況によってどのような選択肢をがベストかが変わってきてしまうからです。

1. 理3非合格圏内 or 理3のリスクを負えない

勉強

まず、東大理3を受けるという選択肢を除外しましょう。というのも、今回の質問者さんの状況から考えると、理3受験は想定していないと思われるからです。

もし理3に合格できる実力があるのであれば、選択肢を広げるという観点では理3に入るのが最善だと思います。理3生の大半は進学振り分け制度(進振り)で高得点を取らなくても東大医学部に進学できますし、もし入学後に他の分野に関心が移ったならば、進振りで他の学部に進学すれば良いからです。

実際に私の周りにも理3→非医学部に進学した友人が何人かいました(非常に優秀な友人でした)。また、医学部に進んだ後に別の学部に移った同級生もいました(これまた非常に優秀な友人でした)。

理3に入学すれば幅広い選択肢があるので、理3に入学できるのであればそれがベストです。ですが、理3は非常に狭き門です。実際に理3の合格最低点は理1,2とは大きく離れています。

大学
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また、仮に理1,2で受験して理3の合格最低点を超えていたとしても、本当に理3に合格できたかは分かりません。というのも、採点基準が理1,2と理3で違う可能性があるからです。加えて、理3に出願して理3の合格最低点を超えるには、相当のプレッシャーがかかります。

理3に合格する大変さについては、理3→東大医学部卒医師である「カガミル先生」の記事で詳しく書かれているので、興味のある方は読んでみて下さい。

2. 東大理1,2に合格できる可能性がある程度の学力がある

ノート

もう1つ、東大理1,2に合格できる可能性がある程度の学力があることを前提とさせて下さい。

というのも、東大理1,2が明らかに難しい場合、これまた戦略が変わってきてしまうからです。

今回の質問者さんの状況を察するに、東大を検討できる学力があると思われるので、この前提で話を進めさせて頂きます。

3. 医者が他の理系職と比べて魅力的かという論点ではない

今回の質問者さんは、

「なんとなく医者に興味を持っているけども、東大に行きたいと言う気持ちもあるなぁ・・・・」

と考えていると解釈しました。

今回は

「職業としての医者は他の理系職と比べて魅力的ですか?」

と言うような論点ではないとさせて頂きます。

というのも、私は医者、研究者以外の道を歩んでいないため、上記の論点については適切なアドバイスができない可能性が高いからです。

なお、医者になって良かった事、大変だった事については以下の記事でまとめたので、参考にしてみて下さい。

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2. 「どれほど医者になりたいのか」に尽きる

手術

東大と医学部で迷われている方に対して一番最初に言いたいことは

どれくらい医者になりたいと思っていますか?

ということです。

医学部は特殊な学部でして、医学部生の大半が将来医師になります。高校生の時点である程度将来の方向性が決まってしまうのです。

高校生の時点でこの選択をするのは正直酷な気もします。実際に私自身、高校生の頃は自分の将来についてそこまで深く考えていませんでしたし、今思えば知らないことだらけでした。

ただ、もし高校生の時点で医学や医療に興味がある、医師になりたいけれども、東大のブランドも気になるなぁ、あわよくば東大理2→東大医学部を目指そうかな・・・と思われているならば、これまでも繰り返し言ってきている通り、

「国公立医学部に進むべき」

だと私は思います。

なぜなら、東大理2→東大医学部のルートは運の要素も大きく、一般的に再現性が低いと考えられているからです。

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3. 本気で研究者を目指しているなら東大へ

研究者

たまに相談を受けるのが、

「研究者になりたいけど、非医学部に入るか医学部に入るか迷っている」

というケースです。

これに関しては議論が分かれますが、私自身は

「本気で研究者として生きていきたいなら東大の非医学部に入る」

ことをお勧めしています。

というのも、医学部のカリキュラム上、どうしても医学知識の習得に時間がかかってしまうからです。

また、一部の特殊なコースを除いて、医学部のカリキュラムは研究者を育成するために作られていないと思います。実際に基礎研究の訓練を受けないまま卒業する医学部生も多いです。

もちろん学生の中には、将来研究者になりたいという強い想いを持って入学し、在学中に自主的に研究室に通っていた生徒もいます。中には在学中に研究で成果を上げ、有名誌に筆頭著者として論文をpublishしている生徒もいました。

ですが、高校の同級生を思い浮かべてみると、優秀かつ研究者になりたいという思いを持った友人は非医学部に進学し、早期から研究者としてのトレーニングを受けていたように思います。彼らの中にはすでに研究者として名を挙げている人もいます。医学部に入って研究するメリットとしては

  • 経済的に安定する
  • 医学的なバックグラウンドを持って研究できる
  • 臨床検体や臨床情報にアクセスしやすい

などが挙げられます。特に経済的に安定した上で研究を続けることができるというのは大きなメリットだと思います。医師免許があれば、週2回程度の非常勤勤務でも十分生活していくことができるのです。

このように、医師免許を持った上で研究するメリットは確かにあるのですが、本気で研究者として生きていきたいなら、なるべく早期から研究者としてのトレーニングにコミットする方を優先するべきだと思います。

研究者の道は競争が激しい上に医師と比べて待遇面も恵まれていないというのは事実だと感じますが、それでもなお優秀でモチベーションの高い方々には、医学部ではなく研究者の道を目指して欲しいと思います。

4. 決めきれないなら、まずは情報収集を

リサーチ

医者になるか研究者になるか、もしくはその他理系職になるか決めきれないという方は、まずはいろんな可能性を念頭に入れて情報収集してみると良いと思います。

今は様々な職業の方がSNSやブログで情報発信しているので、医者や研究者、その他理系職の仕事をリサーチしてみましょう。

もし本気で気になっているのであれば、知り合いのつてを辿るなり直接メッセージを送るなりして、コンタクトをとってみましょう。というのも、実際に働いてみると、現場で働く人の意見は最も信頼性が高く貴重だなと感じるからです。

私も医師として働き始めてから、「高校生や大学生の頃に思っていたのと違ったな」と思うことも多々ありました。そう言った生の声を手に入れるには、経験者に実際に聞くのが一番良いです。

私は結果的に満足した仕事につくことができましたが、中学ー高校時代にもう少し情報収集をしておけば良かったとも思っています。

5. それでも決めきれないなら東大へ

大学

もちろん高校生のうちにある程度将来の方向性が決まれば良いですが、実際は難しいケースの方がはるかに多いと思います。「医師になりたい」と思う決定打が見つからなかった場合、

私だったら「医学部を目指す」のではなく「東大を目指す」道を選びます。

というのも、医学や医療に関してはどうしても好き嫌いがあるからです。医学部に進んだけども医学に興味が持てない・・・・医師になったけど医療に興味を持てない・・・・というケースも実際にちらほら目にします。

東大には進学振り分け制度があるので、内部で勉強しながら進路を選ぶ事ができるます。これは大きなメリットだと思っています。

大学で勉強した上で「やっぱり医学部に進みたい」ということであれば、進振りや学士編入、再受験などを検討すれば良いと思います。医師の働き方が多様化してきている中で、何かの専門性を持った上で医師になるという選択は悪くないと思っています。私の周りにも東大→再受験or学士編入で医師になった方が何人もいらっしゃいますが、優秀な先生が多いです。

もちろん医学部に入った上で他の分野の勉強をするという方法もありますが、

  1. 地方国公立大よりも東大の方が(学術面で)周りの友人や環境に恵まれる可能性が高い
  2. 医学部は閉鎖的なので、医学部にいると結局周りと同じような道を辿ることが多い気がする

ので、私だったら東大で勉強しながら考えるという道を選ぶ気がします。

仮に東大非医学部→学士編入or再受験の道を選んだとしても、医師以外のバックグラウンドと高い志を持った上で過ごす医学部生活は、相当密度の濃い期間になりうると思います。何歳になっても志を持って学び続ける姿勢があれば、成長し続けれられると思います。

今回は「東大と医学部のどっちを選ぶべきか」について考察してみました。いかがでしたでしょうか。

このテーマに関しては様々な意見があるとは思います。確かに医師はやりがいがありますし、私自身医師になって良かったと思っています。非医学部の同級生をみていても、特別に優秀なケースを除けば、経済的な安定度や働く場所の選択肢の多さという点では医師に軍配が上がると思います。

ですが、この状況はいつまで続くか分かりません。私自身、もし自分の息子に相談されたら、心から医師になりたいなら医学部に進むべきだと伝えますが、それでも医学以外の分野もしっかり勉強するようアドバイスすると思います。もし研究者などの道を考えつつも医師の経済的な安定度に魅力を感じているようであれば、東大の非医学部に進むようアドバイスする気がします。

人生において何を優先するかによってとるべき道は変わるので正解はないと思いますが、後悔のないよう最大限情報収集した上で選んでもらえば嬉しいです。

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そら
医師・研究者 | 妻(@yukizorablog_Y)と医師夫婦ブログを書いてます | 医療や教育に関する記事を残していこうと思っています。
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