産婦・医療

ここ20年で2倍に増加!帝王切開についてのお話

手術

こんにちは、ゆきです。
産婦人科医として働いています。

今回は、帝王切開についてのお話しをしようと思います。
帝王切開がどの位の頻度で行われているかご存知ですか?なんと妊婦さん4〜5人に1人程度なんです。

お産はいつ何が起こるかわかりません。誰にでも、突然母児の危険に直面する可能性があり得ます。そんな時に帝王切開術についてなんとなくでもイメージがついていると、その時の緊張が少し和らぐかもしれません。

1. 帝王切開ってどういう時にするの?

帝王切開には、予め手術日程を決めておく「選択的帝王切開術」と、突然緊急で行う「緊急帝王切開術」、さらに1分1秒を争う「超緊急帝王切開術」という3つがあります。

それぞれの適応は下記の通りです。

緊急度で分けた3つの帝王切開・その適応
  1. 選択的帝王切開術
    骨盤位、帝王切開既往、前置胎盤、双胎・品胎など
  2. 緊急帝王切開術
    分娩停止、胎児機能不全、母体合併症の悪化、帝王切開予定の患者の緊急事態など
  3. 超緊急帝王切開術
    胎児機能不全、常位胎盤早期剥離、器械分娩不成功など

選択的帝王切開術の多くは、逆子ちゃん(骨盤位)や、過去に帝王切開術を行ったことがある(帝王切開既往)妊婦さんに行われます。
また頻度は下がりますが、胎盤の位置が低く出血リスクの高い前置胎盤や、双子・三つ子などの多胎の時にも施行します。

しかし、骨盤位・帝王切開既往・双胎の場合、経腟分娩の選択肢も一応あります。かなり条件は絞られますが、経腟分娩を試みる許可が出るかもしれません。先生や病院施設にもよるので、選択肢の1つとして聞いてみても良いでしょう。

緊急帝王切開術は、大きく分けて4つの適応で行います。

  • 分娩が進行しないとき=分娩停止、児頭骨盤不均衡(骨盤が狭いor赤ちゃんが大きい)など
  • 赤ちゃんが具合悪いとき=胎児機能不全など
  • お母さんが具合悪いとき=母体合併症の悪化(血圧上昇、臓器障害など)
  • 帝王切開予定だった人が、予定よりも前に胎児機能不全に陥ったり、破水・陣発などの分娩徴候を認めたとき

経腟分娩が困難、あるいは経腟分娩にリスクを伴う場合に行われるのが緊急帝王切開術です。どの程度の「緊急」なのかは、その時の状況によって産婦人科医が判断しますが、通常30分〜半日で手術室に向かうことが多いです。

超緊急帝王切開術は、手術決定から胎児娩出まで15〜30分以内に行うことを目指す手術です。今まさに胎児・母体の状態が急変している場合に行います。
これについては、次のセクションでお話ししますね。

余談:帝王切開術をドイツ語でKaiserということから、私たち産婦人科医はカイザーと呼んでいることが多いです。英語ではCesarean Sectionなので、カルテにはCSって書いたりしてます。

2. “超”緊急帝王切開って何?

超緊急帝王切開術とは、GradeA帝王切開とも呼ばれます。明確な定義はないのですが、手術決定から胎児娩出まで15分〜30分以内に行うことを目標とし、母児2人の命のかかった非常に緊迫した手術になります。

例えば、赤ちゃんの徐脈が戻らなかったり、赤ちゃんよりも先に胎盤が剥がれてしまったり(常位胎盤早期剥離)、赤ちゃんよりも先に臍の緒が出てきてしまったり(臍帯脱出)、鉗子分娩・吸引分娩でお産にしようと思ったけど出来なかったりと、適応は色々です。
赤ちゃんの徐脈が数分続いただけで、赤ちゃんの命や今後の神経学的後遺症のリスクが上がってしまうので、病院内のどんな緊急手術よりも先に、無理やりねじ込んで手術室に入室します。

超緊急帝王切開術の流れ

①産婦人科医が超緊急(GraedeA)を宣言
②産婦人科の他の医師を招集、小児科・麻酔科・病棟助産師・手術室看護師に連絡
③すぐに患者をストレッチャーへ
④全速力で手術室へ
⑤麻酔科の先生が全身麻酔導入
⑥患者が眠り、気管挿管が終わった瞬間に手術開始
⑦1〜2分で児を娩出し、小児科医に蘇生依頼

1分1秒も無駄に出来ない上、色んな人の協力なしには出来ないので、院内でも年に数回シミュレーションを行い、実際起きた時にスムーズに動けるように訓練しています。

ゆき

日中ならまだしも、夜間の場合は家から駆けつけるスタッフたちもいるわけで、赤ちゃんが生まれる瞬間まで気が抜けません。お腹にメスを入れてから赤ちゃんを取り出すまでに1〜2分の早技です。

3. 帝王切開の手術ってどんな流れ?

通常の帝王切開は、次のような流れで行われます。
手術時間は60分程度。麻酔したり手術室での色々な確認作業があったりで、計2時間くらいは手術室にいることが多いです。

帝王切開術の流れ

①手術室に入室
②背中からの区域麻酔を行う
③消毒、内診、胎児心拍確認など
④清潔な布をかける
⑤お腹をあけて子宮にメスを入れる
⑥お腹を押して赤ちゃんを取り出す
⑦赤ちゃんは新生児担当医師が受け取って処置
⑧子宮やお腹を閉じている間、お母さんが赤ちゃんと面会
⑨赤ちゃんが先に手術室を出て家族と面会
⑩手術終了、病棟へ戻る

触られている感覚は残りますが、痛みは全くありません。麻酔が効きすぎて気持ち悪くなってしまったり、手術時間が予定よりも長くなりそうな時は、眠たくなるような薬も併用して行うことがあります。
赤ちゃんが元気であれば、お腹を閉じている間に面会。触ったりも出来ます。

4. 帝王切開術の合併症は?

帝王切開術の合併症として、大量出血、周辺臓器の損傷(膀胱・直腸・尿管など)、赤ちゃんの損傷(擦り傷・切り傷)、術後の腸管麻痺、腹腔内感染、血栓塞栓症などが考えられます。さらに手術の時に使う薬でのアレルギーや、麻酔による神経損傷・血腫などのリスクもあります。
こういった合併症は、緊急手術ほど起こりやすくなります。

また術後も普通の分娩より大変です。医療スタッフは、血栓予防に早く離床を促しますし、授乳などの育児も並行して行わないといけないですし、何より傷も痛みます。入院期間も長くなります。

そのため、適応がないのに本人の希望で帝王切開をすることはありません。身体にメスを入れるということは、それだけ大変なことなんです。

5. 帝王切開は立派な分娩です

時折、帝王切開になってしまった人が「私は普通のお産ができなかった…」と悲しんでいる場面に出会います。
しかし、帝王切開は立派なお産です。今まで述べてきたように、手術であっても、本当に大変な色々を乗り越えて赤ちゃんが生まれます。

帝王切開は、赤ちゃんにとっては経腟分娩よりもある意味楽なお産になります。狭い産道を頑張って通ってくる必要がないですからね。しかしその分、お母さんが負担を担ってあげているのです。
仮に帝王切開になったとしても、全く自分を責めないで欲しいです。お腹の傷も、赤ちゃんへの愛情の結晶です。

今回は帝王切開術についてお話ししました。周産期センターで働いていると、毎日複数の帝王切開がありますが、どの分娩でも本当に感動します。
安全を重視する風潮が強く、帝王切開はここ最近でかなり増えてきているんです。帝王切開について、少しでも知っていてもらえると嬉しいです。

最後に、少しでも多くの方にこのブログをご覧いただけるよう、応援よろしくお願いします!

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
        ↑
1日1回、クリックお願いします!

ABOUT ME
ゆき
◆ 医師(産婦人科) ◆ 県立女子高校→地方国公立医学部 産婦人科医の視点から、正確でわかりやすい情報をお届けします。 twitter:@yukizorablog_Y Instagram:yukizora_yuki
いつも応援頂きありがとうございます!

【ブログ村ランキング参加中】
少しでも多くの方にこのブログをご覧いただけるよう、応援よろしくお願いします!

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
        ↑
1日1回、クリックお願いします!

 

ブログ村の読者登録もお願いします(^^)

ゆきぞらブログ【東大医学部卒医師そらと産婦人科医ゆき】 - にほんブログ村

 

SNSのフォローもお願いします!

【そら】
東大医学部→研究医

【ゆき】
◆ 国公立医学部→産婦人科医

Instagram