コウノドリ

産婦人科医がコウノドリ2巻を読む

こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。

コウノドリをゆっくり読み返しています。
それに伴い、産婦人科医的な視点から、率直な感想をブログにまとめられたらと思って筆をとりました。

前回1巻を読んだので、今回は2巻。
例に漏れず、興味深いトピックがたくさん詰め込まれています。

産婦人科医がコウノドリ1巻を読む こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。 先日、コウノドリ全巻をまとめ買いしました。何回も読んでいたのですが、2...

今回の巻から、鴻鳥サクラ先生と同期の四宮先生、助産師の小松さんも登場し、さらに面白さが増しています。

ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はブラウザバックをお願いします。

1. 人工妊娠中絶と未成年妊娠

1. 人工妊娠中絶:12週を境に方法がかわる

人工妊娠中絶
妊娠22週より前であれば、人工的に妊娠を中断することが可能です。
妊娠22週未満であれば外界で赤ちゃんは生きられないわけですから、妊娠の中断はすなわち赤ちゃんの死を意味します

人工妊娠中絶を行う理由は様々。望まない妊娠だったり、経済的に厳しかったり、赤ちゃんに重篤な異常が見つかったり、母体の健康上妊娠継続が困難と判断したり、色々。

産婦人科医は医師の中で唯一、生命を奪う権限が与えられているのです

今回のお話の主役は高校生のカップル。
妊娠13週で妊娠に気づき、産婦人科を受診します。人工妊娠中絶をするか、妊娠を継続するかを選ぶ過程で、非常に悩み苦しみます。

人工妊娠中絶を行う上で1番重要な週数は、処置が可能かそうでないかを決める「妊娠22週」ですが、その次に大切なのが「妊娠12週」です。

妊娠12週未満か以降かでは、人工妊娠中絶を行う方法がまるで違います

前者はいわゆる流産手術と同様、子宮内容除去術という手術を行います。手術自体は5〜10分で終わりますし、母体への負荷も少ないです。翌日には帰れます。

一方、後者の場合は赤ちゃんがある程度大きくなってきているので、手術では赤ちゃんを外に出すことができません。分娩と同様、子宮の出口を広げ、陣痛を誘発するお薬(多くは腟錠)を入れ、陣痛を起こすことによってお産にするのです。
お産は何時間・何日かかるかわかりません。母体への負担もその分大きくなります。更には死産証書が発行され、火葬する必要もあり、精神的負担も大きいだろうと予想されます。

  • 妊娠12週未満:子宮内容除去術(手術)
  • 妊娠12週以降:頚管拡張→分娩誘発
    死産届けの提出が必要

中絶は殺人です
って…そんなことを言う人もいますが、中絶とはそんなに単純なものではないとボクは思っています。
中絶を決める患者さんは置かれた立場や状況などで…
理由はそれぞれ違います。

…ただ、喜んで中絶を受ける女性はいません。
ボクラもそうです。喜んで中絶を行う産科医はいないんです。
(鴻鳥サクラ)

サクラ先生も言っていますが、中絶の手術を喜んで行う産科医はいません。

例え妊娠12週未満の中絶であっても、元気に動いている赤ちゃんをエコー下に見ながら処置を行うわけで、かなり心が痛みます。何回やっても慣れませんね。

2. 未成年妊娠の処置は両親の同意が必須

未成年妊娠をみるたびに思うのが、日本の性教育のあり方についてです。

日本ってかなり遅れてますよね。実際私も、産婦人科医になるまでモーニングアフターピルの存在を知らなかったし、排卵がどのくらいとかよくわからなかったし、生理の何が正常で何が異常なのかよく知らなかったし。

単に私の知識不足なのかもしれませんが、性教育って全員に関わるとても大切なことなのに、なぜか少し恥ずかしい話題のように感じて、友達と共有することもありませんでした。

最近はスマホの所持率が上がったり、SNSでの繋がりが増えたりして、親が自分の子供の活動範囲を把握できないことも多い

性暴力被害を受けられた方に、どこで相手と知り合ったのか聞くと、TwitterなどのSNSや、オンラインゲームなどの頻度が高いことに気づきます。そこで知り合った人と、いわゆるオフ会として出会い、被害にあうといったことは、皆さんが想像している以上にかなりありふれています。

今回のカップルは「被害」とは違うわけですが、いずれにせよ適切な避妊方法を知らないとか、妊娠13週まで気付かないとか、やはり知識不足感は否めない。

こういった症例をみる度、赤ちゃんにとっての幸せってなんなんだろうと考えます。

お前らのことなんか、ちっともかわいそうなんて思わねえよ。
一番かわいそうなのは腹ん中の子供だろ。
親のスネかじって…てめーらで産むことも堕ろすことも
決められねぇくせにガキなんか作りやがって
(彼氏側の父親)

2人の両親にとっても酷な選択が強いられます。
未成年者は1人では選択ができないため、両親の同意が必須なのです。

自分が両親の立場だったらどんな選択をするのでしょう。まさか自分の子供が、と思わず、こういうことまでしっかりと話し合っておく必要があるのかもしれませんね。

中絶を行った患者さんの中には、中絶後遺症候群といって
中絶をした罪悪感から精神的に病んでしまい立ち直れない女性もいます。
その一方で何度も中絶をくり返す女性もいます。
この2つは一見正反対の様に見えますが、その原因は…
中絶と向き合わないまま中絶を行ってしまったからだと思います。
(鴻鳥サクラ)

赤ちゃんにとっての幸せ、カップルにとっての幸せ、そして未成年妊婦の場合はそのご両親も含めた家族にとっての幸せ。それらを総合的に考え、しっかりと患者さんに向き合うことの大切さが身に染みます。

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今回のカップルは妊娠を継続する道を選ぶわけですが、これからも大変な道のりが待っていることでしょう。両親を含めた家族全員で、穏やかな家庭を築いて欲しいと切に願います。

2. 無脳症

医師

次のお話は、2年前に無脳症の児を中期中絶した川村さんのお話。

赤ちゃんの神経管の形成過程で異常が起きると神経管閉鎖不全をきたし、骨や神経組織が部分的に形成されなくなります。
腰仙部で異常が起きたものが二分脊椎(これを防ぐために葉酸を補充したりしますね)、頭部で異常が起きたものが無脳症です。

無脳症の赤ちゃんは外界では生きることができません
妊娠週数が増えるほどお産のリスクが増すので、サクラ先生は医療者として人工妊娠中絶を勧めます。そして最終的には夫婦で決断を下すよう説明します。

それはある意味、冷たい対応のように思われるかもしれません。しかし、産婦人科医として、事実を伝える以外にどうすることも出来ないのです。

助けられないと分かっている赤ちゃんのために
医者はその家族と一緒に悩むことはできない。
産科医は無力だ。

川村さんは辛い死産を乗り越え、1年後に次の妊娠をされました。

また同じ経過を繰り返すのではないかという不安、自分が無脳症で出産した子を乗り越えることなんて出来ないという葛藤、そういったものと寄り添いながら、無事に出産の時を迎えるのでした。

3. 被膜児(幸帽児)

赤ちゃんが生まれる時、多くは赤ちゃんを包んでいる膜が破れた後に出産になります。
一方、破水せず卵膜かぶって産まれる児被膜児(幸帽児)と言います。

コウノドリ2巻ではどちらも早産期(30-32週)のロビーでの分娩が描かれていますが、私はまだこういった症例は経験がありません。
…実際の頻度ってどの位あるんでしょうね。

ただ、被膜児(幸帽児)分娩そのものは意外と珍しいものではなく、例えば早産期の帝王切開などではわざとそのように分娩させることがあります。

羊膜に包まれていれば、羊水がクッション的な役割を果たして赤ちゃんを守ってくれるので、赤ちゃんへのストレスを軽減できるというわけです。

早産期の赤ちゃんは正期産の赤ちゃんと比べてストレスへの耐性が弱い傾向にあるので、幸帽児分娩をトライすることもしばしば。

とある昔、ある産婦人科医が幸帽児分娩を成功させた後、破膜をしないまま小児科医に渡したことがあったとか。小児科の先生は戸惑ったでしょうね。
いずれにせよ破膜しなければ赤ちゃんは呼吸が出来ないので、すぐさま破膜、というのが大切です。

4. 喫煙妊婦

最後は喫煙妊婦のお話。この章は次の3巻にもつながることなので、今回はさらっと1つだけ伝えさせて下さい。

妊娠中の喫煙は絶対に絶対にやめて下さい!!!!!

喫煙でリスクが上がる産科合併症って多数あるんですよね。例えば胎児発育不全、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、流産・早産、赤ちゃんの精神発達遅滞などなど。最悪の場合、母体死亡・胎児死亡に至ることもあります。

妊娠中に喫煙されてた方でも無事に出産された女性はいます。
しかし喫煙が出産のリスクを高くするのは確かです。
何かが起きた場合、喫煙が直接的な原因だったとは断定できません。
だから怖いんです。
自分がもし煙草をやめていればと
自分を責め続ける結果になる女性もいます。
(鴻鳥サクラ)

禁煙を口煩く指示する時、うるさいなと思ってしまう人も多いことでしょう。ただ、私たち産婦人科医はあなたに無事に出産の時を迎えて欲しいからそのように伝えるのだということは分かって欲しい。

後悔先に立たず。妊娠中の喫煙にはメリットは1つもありません。
妊娠が分かったらすぐにやめるよう、頑張って下さいね。
(煙草の匂いってすぐに分かるので、隠れて吸うのもNGですよ。)

今日はコウノドリ2巻を読んでみました。
四宮先生や小松さんも出てきて、さらに面白さを増しています。
3巻以降も、まったり続けていければ良いなと思っています。

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ABOUT ME
ゆき
◆ 医師(産婦人科) ◆ 県立女子高校→地方国公立医学部 産婦人科医の視点から、正確でわかりやすい情報をお届けします。 twitter:@yukizorablog_Y Instagram:yukizora_yuki
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【そら】
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【ゆき】
◆ 国公立医学部→産婦人科医

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