さて。Twitterを見ると、妊婦さんからのダイレクトな反応が垣間見れます。その中で話題になることの1つに、”内診”がありますよね。
子宮口のことを495と表現していたり、刺激を加えることを内診グリグリと表現していたり、実際の体験談が豊富に語られていたり。
こちらも色々と勉強になります。
え…指…入れるの?どうやって測るの?
などなど、内診について不思議(不安?)に思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
今日はそんな内診の裏側についてまとめてみます。
目次
1. 産科内診って?
内診とは、産婦人科医や助産師の手指を用いて婦人科臓器の状態を診察するものです。
広義的には子宮の大きさをみたり、子宮筋腫やポリープ・卵巣嚢腫がないかをみたりするものも含めますが、今回は妊娠中の子宮頸管の状態を把握するための診察として説明します。
産科内診では、中指と人差し指を腟の中に挿入し、子宮頸管部をさぐって診察して、分娩の進行状況をみています。
分娩が順調に進んでいるかを評価する1つの指標になります。
正常分娩の流れや正常範囲については、次の記事も参考にしてみてください!
子宮頸管がどのくらい分娩の準備を整えているかについては、次に示すBishopスコアを用いて評価します。
下の5項目について、内診によってそれぞれ0〜3点で点数づけ(満点:13点)しており、4点以下だと子宮頸管の熟化が不十分、逆に9点以上だと子宮頸管が成熟している、と判断します。
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | |
---|---|---|---|---|
子宮口開大度(cm) | 0 | 1〜2 | 3〜4 | 5〜6 |
展退度(%) | 0〜30 | 40〜50 | 60〜70 | 80〜 |
児頭の位置(Station) | -3 | -2 | -1〜0 | +1〜 |
頸管硬度 | 硬 | 中 | 軟 | |
子宮口の位置 | 後方 | 中央 | 前方 |
また赤ちゃんの頭の向きや、赤ちゃんの姿勢、赤ちゃんを包んでいる膜の有無なども内診で評価できます。
2. Bishopスコアのそれぞれの意味
Bishopスコアをどのように出すかをお話しする前に、まずはそれぞれの意味について、簡単にお話しします。
①子宮口開大度
子宮口開大度は「子宮の出口がどれくらい開いているか」を示すもの。
そのまんまですね。
0.5cm単位で評価していきます。
厳密に測ることはできないので、○〜○cmのように幅をもって表現されることもあります。
分娩にあたっては、子宮頸管拡張剤として用いられるミニメトロ®︎の水風船が膨らんだ時の大きさが約3cmなので、ざっと
- 子宮口3cm未満→何らかの頸管拡張が必要
- 子宮口3cm以上→頸管拡張は不要
という感じでしょうか。
分娩誘発や頸管拡張については、上の記事も参考になるかと思います。
②展退度
子宮の出口は、ただ単に開いてくるだけではなく、薄く引き伸ばされるような形で開大していきます。
展退度とは、「どれくらい薄く引っ張られてきているか」を示すものです。
言葉で示すときに最もわかりにくいのがこの”展退度”になります。
突然ですが、皆さんはちくわを指にはめた経験ありませんか…?
ちくわが指にキュッとはまるあの感触、あれが大体30%です。笑
逆にペラペラになっているような状態を90〜100%程度と評価し、あとは「ちくわ」と「ペラペラ」の間のどのあたりなのかで、展退度を評価しています。
妊娠満期の子宮頸管長がおよそ3cm程度であると考え、1.5cm程度まで短くなっていたら50%と評価する方法もあります。
③児頭の位置(Station)
子宮の出口の様子だけでなく、「赤ちゃんの頭が今どのあたりにあるか」というのも大切な評価ポイントです。
腟の奥に触れる坐骨棘という突起部分を”±0″の位置とし、そこからどのくらい上あるいは下なのかを示しているものがStationです。
-3以上〜+4程度の間で表されることが多いかなと思います。
ちなみに器械分娩(鉗子分娩・吸引分娩)が可能な高さは、”児頭がStation+2よりも下の位置にいる時”になります。
④子宮口の硬度と位置
上述した①〜③は4段階評価でしたが、
子宮口の硬度と位置は3段階評価で表します。
硬度は次の3段階。
- 鼻翼をつまんだ時の硬さ=「硬」
- くちびるを触れた時の硬さ=「中」
- マシュマロを触れた時の硬さ=「軟」
子宮口の位置については、そのまんまで
- 後方を向いている=「後」
- 中央を向いている=「中」
- 前方を向いている=「前」
になります。
どうでしょう、なんとなくイメージが湧いてきたでしょうか。
3. 内診の実際はこんな感じ
内診する際に長さをどう測るかですが、腟内に定規をあてて測ることはできませんので、何かを指標にしなければなりません。
そこで用いるのが内診指になります。
人によって差はありますが、人差し指の横幅が1〜1.5cm程度。中指と合わせると3cm程度になります。
そのため、私の場合は
- 人差し指が1指入るけどキツイ=1cm
- 人差し指が1指入る=1.5cm
- 人差し指が1指緩く入る=2cm
- 人差し指と中指が入る=3cm
と評価しています。
人によって指の幅は違いますので、産婦人科医になりたての頃、自分の指を色々と定規で測ってみていました。
4cm以上開いている時は、人差し指と中指の間がどのくらい開くかで評価します。
中指と人差し指あわせて3cm、ということを用いて2本分なら6cm…とすることもありますね。
こんな感じで子宮口がどれくらい開いているのかを確認し、それと併せて展退・Station・硬さ・位置を評価しているわけです。
内診は、特に赤ちゃんがまだ上の方にいて子宮の出口が後ろを向いている時が最も触りにくいので、妊婦さんにとっては辛いこともあるかもしれません。
出来る限り負担のないように診察したいとは思っていますが、Bishopスコアを求めることは分娩の準備がどのくらい整っているかを調べるのにとても大切な情報になるので、ご理解頂けると幸いです。
新年1本目の今日は、身近な内診についてまとめてみました。
診察が意外と難しいので、産婦人科医になりたての頃は助産師さんや上級医とすり合わせながら勉強していたことを思い出します。
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あけましておめでとうございます。ゆきです。
とある周産期施設で産婦人科医として働いています。
2022年もゆきぞらブログをよろしくお願いします。