女性ホルモンについては、下記の記事で簡単に触れています。
ただ、もう少し深堀りしないと今後説明しづらいこともあるなと感じたので、この機にまとめてみようと思います。
生理周期だったり、妊活だったり、不妊治療や検査を考えていく上での基本となります。なるべく簡単にしたつもりなので、ぜひ一度お目通し下さい。
目次
1. 月経周期に関わるホルモン
まずは、女性ホルモンを調節し月経に作用する身体の部位について紹介していきます。
- 視床下部
- 下垂体
- 卵巣
- 子宮内膜
視床下部は脳の一部です。
トップで司令を出す”部長“的なポジションになります。
下垂体は脳のすぐ下にある内分泌器官です。
部長のすぐそばでサポートする”課長“のような存在で、部下に指示を出しながら、部長に適宜状況をフィードバックします。
卵巣は”主任“的な立ち位置。課長ポジションである下垂体の指示のもとに動き、適宜下垂体に現状を報告していきます。
子宮内膜はその下の”平社員“だと思ってもらえればと思います。
どうやって指示を出したり、状況を報告したりするの?
その指示伝達に使われるのが下記のホルモンです。
- 視床下部:ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)
- 下垂体:ゴナドトロピン(LH+FSH)
- 卵巣:エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン
視床下部からは
が分泌されます。
このGnRHは名前の通り、下垂体に作用してゴナドトロピンの分泌を促します。
GnRHからの指示を受けると、下垂体からゴナドトロピンが放出されます。ゴナドトロピンは性腺刺激ホルモンのことで、
の2つの総称となります。
そしてゴナドトロピンの指示を受け、卵巣から放出されるのが次のホルモンです。
この他、下垂体からは「プロラクチン(PRL)」と呼ばれるホルモンも分泌されます。こちらは性周期に直接関与するわけではありませんが、増加すると無月経や無排卵などの原因になります。
2. フィードバック機構
視床下部・下垂体・卵巣系の連絡系統は、上から下への一方通行ではなく、下から上へのフィードバック機構もしっかり発達しており、それによって適切なホルモンの量が調節されています。
部長から部下への一方的な命令だけでなく、しっかり部下からの意見も聞いてくれ、適切に対応してくれるホワイトな職場環境であると思ってもらえればOKです。
例えば、エストロゲンの量が多すぎる場合は、視床下部や下垂体にその情報が伝わり、それぞれのホルモン産生を抑制させるのです(ネガティブフィードバック)。
また逆に、下垂体と卵巣の間には、ポジティブフィードバックという特有の調節機構もあります。卵胞発育に伴ってエストロゲンがある一定まで増加すると、下垂体から大量のLHが放出され、それがきっかけとなって排卵に至ります。
3. 卵胞はどうやって発育・排卵するの?
卵胞は出生時点で200万個程度ありますが、出生後に減少し、思春期には5〜10万個程度になるとされています。排卵せずに消失する卵胞も多く、一生で排卵する数は400個程度です。
そして、これがゼロになると閉経となります。
卵巣の中の卵胞は、元々はとっても小さいもの。それがホルモンによって段々と大きく育ち、毎月1個の「成熟卵胞」が代表選手として排卵に至るのです。
これに関わるホルモンが、卵巣から分泌されるFSHとLH。ざっくりと次のように役割が分担されています。
すなわち排卵前にはFSHが、排卵前後にはLHが主役となって作用していると言えます。
これがわかっていると、不妊治療の時に
卵胞を発育させるときは”FSH注射”
排卵を促すときはLH作用を期待した”hCG注射”
を打つ理由が理解できますね!
また、排卵前の卵胞からはエストロゲンが、排卵後の黄体からはプロゲステロンが分泌されます。
黄体からのプロゲステロンの分泌が、基礎体温の上昇などをもたらしていきます。
4. 調整機構の評価方法
①基礎体温
基礎体温とは、起き上がる前にベッド上で測定する、1日のうちで最も低い体温を指します。
前述の通り、排卵後の黄体から分泌されるプロゲステロンが体温上昇をもたらすのでした。
0.3℃以上の体温上昇が7日間以上続けば、正常に排卵がなされていると判断します。逆に、持続が7日未満であれば黄体機能不全を疑います。
②ホルモン検査
月経周期によって下垂体と卵巣系のホルモンはダイナミックに変わっていきます。そのため、どの月経周期でとった値なのかによって正常値が異なってきます。
したがって、ホルモン検査をする場合は”月経○日目”あるいは”排卵○日目”にとったかも併せて確認する必要があります。
正常範囲はおよそ下記の通りです。
- FSH 15未満
- LH 7未満
- LH/FSH<1.5
- エストラジオール 30pg/mL前後
- プロゲステロン 約10〜30ng/mL
- エストラジオール 100pg/mL
これで異常値が発覚した場合、卵巣機能不全や多嚢胞性卵巣症候群などの疾患の診断に役立つことがあります。
③経腟超音波検査
エコー検査では、子宮の内膜の状況や卵巣内の卵胞の大きさを評価します。
子宮内膜は、卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンによって、その周期の応じて少し顔つきが変わり、厚みも変化していきます。
また卵胞も前述の通り、月経直後は小さい卵胞が多数見えるのに対し、排卵直前には成熟卵胞が代表して1つだけ大きく発育し、排卵後には黄体を形成するという流れをとります。
子宮内膜がきちんと厚くなっているのかや、卵胞がしっかりと育っているか等は不妊治療を行う上で非常に大切ですし、もし上手くいっていない場合は適切な介入が必要となります。
5. まとめ
- 月経周期は「視床下部・下垂体・卵巣・子宮内膜」からなる調整機構によってコントロールされている
- 視床下部から分泌されるのがGnRH
→LHとFSHの放出を促す役割を持つ - 下垂体から分泌されるのがLHとFSH
→卵巣に作用し、LHは排卵を、FSHは卵胞発育を促す - 卵巣から分泌されるのがエストロゲンとプロゲスチン
→子宮内膜の変化や体温上昇などに関わる - これらの調整機構がうまく作用しているかは、
①基礎体温、②ホルモン検査、③経腟超音波検査
などで評価できる
今日はホルモンの知識の基礎となる部分を解説していきました。
今後、不妊治療や月経周期についても記事を書いていきたいと思っているのですが、この調整機構について知ってもらえると、より理解が深まるかもしれません。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。