生まれたばかりの赤ちゃんの血液ガスや採血ってどこから採取するの?へその緒について詳しく知りたい!
こんなリクエストを頂いたので、今日は赤ちゃんと胎盤をつなぐへその緒(臍帯)についてみていこうと思います。
臨床をやっていても、意外と深く考えることが少なかったりするので、私としてもなるほどなあと改めて勉強になりました。
奥深い臍帯の世界。ぜひ覗いてみて下さい。
目次
1. へその緒(臍帯)の構造
へその緒(臍帯)は赤ちゃんと胎盤をつなぐ紐状の組織です。
その長さは30〜100cm(平均55cm)。35cm以下であれば過短臍帯、70cm以上であれば過長臍帯と呼ばれます。
臍帯の構造については上のイラストを参照して欲しいのですが、細い臍帯動脈(赤色)が2本、太い臍帯静脈(青色)が1本。そしてそれを弾力に富んだ組織(ワルトン膠質; Wharton jelly)が包んでいる形をしています。
臍帯は基本的には羊水の中をぷかぷかと浮いていて、外から圧迫されても折れ曲がったりせず、赤ちゃんにしっかりと血流を届けられるようになっています。
2. へその緒が巻きつく臍帯巻絡とは?
ぷかぷかと羊水中を浮いている臍帯は、同じくぷかぷかと浮いている赤ちゃんにグルっと巻きつくことがあります。これを臍帯巻絡といいます。
1/4程度の赤ちゃんに認められるとの報告もあり、その頻度は高いです。
赤ちゃんの首にへその緒が2周しちゃってるねえ。
こんなことを妊婦健診のときに言われるかもしれませんが、基本的には気にしなくて大丈夫。
臍帯巻絡と言っても、ぎゅっと首を締めるほどきつく巻きついているわけでは無いですし、それそのものは異常ではないからです。
また、分かったとしてもどうすることも出来ないし、自然と解けることもあるからです。
ただ、巻絡があると分娩中に赤ちゃんの一過性徐脈が起きやすい傾向にあるので、より慎重なモニター管理を要する場合があります。
3. 臍帯動脈血液ガスを解説
1. 臍帯血液ガスは基本的に臍帯動脈から採取
赤ちゃんが生まれた後、私たち産婦人科医は臍帯動脈血液ガスというものを採取しています。
これは、「お産の時に赤ちゃんがどれくらいのストレスを感じていたか」を調べる検査で、基本的には”臍帯動脈“から採取します。
ん…?臍帯動脈と臍帯静脈って何が違うの?
赤ちゃんは肺の代わりに胎盤でお母さんから酸素を受け取り、二酸化炭素を受け渡しています。臍帯には2本の動脈と1本の静脈があることは先ほど述べた通りですが、血液の流れは
・臍帯動脈=胎児から胎盤
・臍帯静脈=胎盤から胎児
になっています。
すなわち、
・臍帯動脈=赤ちゃんの状態を反映
・臍帯静脈=胎盤での酸素・二酸化炭素のガス交換機能を反映
と考えられるわけです。
従って、分娩時の赤ちゃんの状態を把握するためには臍帯動脈の方が優れていると言えますね。
施設によっては臍帯動脈・臍帯静脈両方とも採取する場合もあります。
血液ガスではなく普通の採血の場合は、臍帯”静脈”からとることが多いです。血液ガスと異なり、ある程度の量が必要になるので、太い血管からしっかりとる必要があるからです。
2. 臍帯血液ガスの正常値とは?
臍帯血液ガスの正常値の平均は下記の通りです。
臍帯動脈 | 臍帯静脈 | |
---|---|---|
pH | 7.28 | 7.35 |
pCO2 | 49.2 | 38.2 |
pO2 | 18 | 29.2 |
HCO3– | 22.3 | 20.4 |
この値を基準として、pHが酸性に傾いていないか、代償が起きていないかなどを評価しています。
臨床的には、臍帯動脈血液ガスpHが7.20未満の場合、赤ちゃんに相応のストレスがかかっていたことを示唆するものとして議論がなされます。
4. 臍帯の正常と異常
1. へその緒は螺旋状に捻れている
へその緒は自然に螺旋状にねじれた構造を呈しています。
このねじれが強すぎても(過捻転)、弱すぎても(過少捻転)、赤ちゃんにとっては良くありません。
両者とも、赤ちゃんの具合の悪さや、子宮内胎児死亡などに影響すると考えられています。
2. 時に結び目を作ってしまうことも
胎動などでへその緒が結ばれてしまい、結節を作ってしまうこともあります。
結節が強くなってしまうと赤ちゃんにうまく血液を送ることができなくなってしまうため、胎児機能不全の原因になり得ます。
3. 単一臍帯動脈は要注意
普通のへその緒は、臍帯動脈(Artery)が2本、臍帯静脈(Vein)が1本の2A1V構造をとっています。
しかし時に、臍帯動脈が1本しかないこともあります(1A1V)。これを単一臍帯動脈(single umbilical artery;single UA)と言います。
なぜ単一臍帯動脈になってしまうかの原因は様々です。例えば先天的に欠損していたパターン、あるいは血栓などで詰まって消失してしまったパターンなど。
頻度は1%程度と稀ですが、赤ちゃんの発育不全に関わったり、他の奇形(腎臓や脊椎の異常など)を合併しやすいという報告もあるため、注意してフォローしていく必要があります。
5. 臍帯が胎盤のどの位置に付着するかも大切
臍帯だけを見るのではなく、胎盤との位置関係を把握しておくことも大切。付着部位は次の通りで、ざっと4種類あります。
- 中央付着:ど真ん中に付着
- 側方付着:真ん中から少し横にずれた位置で付着
- 辺縁付着:端っこに付着
- 卵膜付着:卵膜だけに付着
赤ちゃんはへその緒を介して胎盤から酸素や栄養をもらっているので、ど真ん中についていた方が効率よく養分をキャッチできる、というのは想像しやすいのではないでしょうか。
つまり、赤ちゃんの発育不全や胎児機能不全になるリスクが高いのは、
卵膜付着>辺縁付着>側方付着>中央付着
なのです。
特に卵膜付着の場合、卵膜に付着している臍帯の一部がワルトン膠質に覆われていないので、圧迫などの刺激で容易に潰され、血流が絶たれます。
そしてそれが赤ちゃんが具合悪くなる原因の大きな要因になり得るのです。
いかがだったでしょうか。
臍帯は赤ちゃんとお母さんをつなぐ命綱として、十月十日赤ちゃんに酸素や栄養を送り続けてくれています。
だからこそ、そこの異常をしっかり診断し、胎児管理につなげることがとても大切なのです。
赤ちゃんのスクリーニング検査で、臍帯の付着部位や単一臍帯動脈か否かなどを見ているのはそんな理由からです。へその緒って意外と奥深いな、というのがみなさんと共有できたら嬉しいです。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。