こんにちは。産婦人科専門医のゆきです。
産婦人科を専門としていると、友人や同僚から「妊娠したいんだけど…」という相談をされることがしばしばあります。
今日は妊娠をしたいと思った方が、はじめに押さえておきたいポイントについてまとめていきます。
目次
1. LHの急上昇(LHサージ)と排卵
女性は毎月1つの卵胞を発育させ、十分成熟したところで卵巣から排出します。この卵胞の排出を「排卵」といいます。卵胞の中には1つの卵子が入っており、これが卵管を通って子宮に移動して、受精が可能な状態となります。
この排卵に大きく関わるホルモンが「LH」。
医学的には”LHサージ”と呼ばれる、急激なLHの上昇がきっかけとなって排卵が起きるのです。
LHサージが起きた後に排卵する、これをまず覚えておいてください。
また、排卵してからの卵子の寿命は約24時間です。
- 卵巣の中で卵子が1つだけ大きく発育する
- LHの値が短期間に急上昇する=LHサージ
- LHサージがスイッチとなり、排卵が起きる
- 排卵してからの卵子の寿命は24時間
2. 排卵検査薬はLHを調べる検査
LHサージの持続時間はおよそ2日間です。
LHサージが始まってから約24〜36時間、ピークからは10〜12時間で排卵が起きることがわかっています。
そしてこのLHの値を調べられるのが、薬局などで購入できる「排卵検査薬」です。これは尿中のLHを測定しているものなんですね。
基準ラインと”同等”あるいは”濃く”発色した日を陽性と判定しており、検査陽性から2日以内に排卵する確率は9割以上とされています。
3. いつタイミングを取れば良いの?
さて本題に移りましょう。
いつタイミングを取れば良いのか、と聞かれた時には
排卵前の5日間に2〜3回タイミングを取ると良いよ!
もし1回しかタイミングを取れないなら、排卵2日前を狙うのがベスト。
と答えています。参考として、下記のグラフを見てみてください。
排卵日を0として、その周期に一度だけ性交渉をしたときの妊娠率がどのようになったか示したグラフです。
横軸が日付(排卵日との差)、縦軸が妊娠率になっていますが、
- 排卵5日前から妊娠する確率が出てきている
- 排卵2日前〜排卵日にかけての妊娠率が高い
- 排卵後は妊娠する可能性は低い
と読み取ることができます。
これらの結果を踏まえて、
「5日間のうちに隔日で2〜3回」
「1回しかタイミングが取れないなら排卵2日前」
と伝えているわけです。
排卵後はほとんど妊娠確率がないものだと思ってください。排卵前5日間が勝負なのです。
4. 28日周期の人の場合のタイミング例
例えば、生理が28日周期で毎月大体同じタイミングにきている人であれば、生理が始まった日を0日として、14日目頃に排卵が起きます。
つまり、性交渉のタイミングは
- 複数回タイミングを取れる人 → 10日目、12日目、14日目
- 1回しかタイミングが取れない人 → 12日目
がベストということです。
どうでしょうか、イメージが湧きましたか?
もちろんお仕事などもあるでしょうし、ご夫婦の予定もあるでしょうから、あくまでも目安にしてくださいね。
5. 1年以上妊娠しなければ産婦人科へ
正しい時期に複数回タイミングをとっても1年以上妊娠しない場合は、何か不妊に関わる異常があるかもしれません。1年以上は自身で粘らず、ぜひ産婦人科にご相談ください。
一番最初に不妊外来にいらっしゃった時にする一般的な検査の内容は、次の記事に詳しくまとめてあります。
今回は妊娠を望むときの性交渉のタイミングについてまとめてみました。
ホルモンの急上昇をきっかけに排卵が起きて、卵巣が寿命を迎えるまで、思いの外明確な時間制限があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
人体って本当によくできているなあ、妊娠するって本当に奇跡的なことだよなあと、思いを馳せる日々です。
最後に、少しでも多くの方にこのブログをご覧いただけるよう、応援クリックよろしくお願いします!