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医学部卒業後の進路とは?[現役医師が卒後研修について解説]

医師
そら

こんにちは、そらです。
東大医学部を卒業し、現在は医師・医学研究者として働いています。

読者の方から、医学部の卒業後の進路について質問されました。

医者を目指していますが、イメージが湧いていません。医学部を卒業後はどのようなキャリアを歩むのでしょうか?

確かに、親族にお医者さんがいないご家庭ですと、医学部卒業後にどのような研修を行うのかイメージしにくいかもしれません。実際私も、親族に医者がいなかったので、高校生の頃は正直よく分かっていませんでした。

そこで今回は、医学部卒業後の進路(後期研修終了後まで)について解説します。

なお、医学部入学後から卒業までの過程についてはゆきさんが既にまとめてくれているので、以下の記事をご参照下さい。

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1. 医師国家試験

ノート

まず大前提として、医師になるには医師国家試験をクリアしなくてはいけません。卒業試験をクリアしても医師国家試験に落ちてしまうと、国試浪人生活を送ることになります。

この場合、来年度にもう1度マッチング(就職活動のようなもの)を受けなくてはいけないだけでなく、内定していた研修病院に多大な迷惑をかけてしまいます。と言うのも、少人数しか研修医を採用していないような病院ですと、研修医が1人減ることで他の研修医の負担がかなり重くなってしまうのです。

私の研修病院でも、以前に内定者が国試に落ちてしまったことで、研修医が1人少ないと言うことがあったそうです。1人減った分、1人当たりの当直の回数が増えてしまい、かなり大変だったと伺いました。

2. 初期研修

無事に医師国家試験に合格すると、大多数の生徒は内定をもらっていた病院で2年間の卒後臨床研修を行います。この卒後臨床研修は、一般的には「初期研修」と呼ばれています。

初期研修では、様々な診療科を幅広くローテートし、その中で将来何科に進むかを決めることになります。プログラムは病院によって様々で、1ヶ月ごとに科をローテートするような病院もあれば、3ヶ月ごとにローテートする病院もあります。また、各研修医の裁量でローテートする科をある程度自由に選択できる病院もあれば、ほとんど全て決められているような病院もあります。

今回はわかりやすさを優先し、

  1. 都心(中核都市)の市中病院(非大学病院)
  2. 郊外の市中病院
  3. 大学病院

の3つに分類して解説します。

1. 都内(中核都市)の市中病院(非大学病院)

都内にある大学病院以外の中核病院で研修するというコースです。

市中病院は一般的に、大学病院ほど専門性は高くないですが、比較的頻度の高いような疾患を幅広く経験する事ができます。そして、医者の人数が少ない分、研修医の裁量が大学病院よりも多い傾向があります。

病院によって異なりますが、特定の大学との繋がりが非常に強い病院を除けば、いろんな大学卒の医師と一緒に働くことができます。実際に私の研修病院にも、東大以外の様々な大学から研修医が来ていたので、色々なつながりが増えました。

以前は初期研修医の給料がほとんど無く、初期研修医が医者のアルバイトをして生計を立てている時代があったそうです。現在の制度ではアルバイトはできませんが、その代わり一定額の給料が保証されています。生活していく分には十分です。給料は病院によってまちまちですが、3つのパターンの中で中間くらいのことが多いと思います。

2. 郊外の市中病院

このパターンも結構多い印象です。実際に東大の同級生を見ても、東京から出て郊外の中核病院で研修するというパターンをよく見かけました。

郊外の中核病院ですと、都内の病院と比べてさらに医者の数が少ない傾向があります。そのため、やる気さえあれば短い期間でより濃密な研修生活を送ることができるようです。特に、将来外科系の診療科に進もうと考えているような体力のある学生は、このコースを選んでいる傾向が強かったように思います。

私はなんとなく初期研修を都内で行おうと思って決めてしまいましたが、今思い返すと、初期研修の2年間は東京を離れてもよかったのかなと思っています。

給料については、一般的に郊外の病院の方が高い傾向があります。そのため、3つのパターンの中では最も高いケースが多いです。

3. 大学病院

最後は大学病院で研修するというパターンです。出身大学にもよりますが、このパターンは意外に多くない印象です。

大学病院で研修をするメリットとして、

  • 稀な疾患も経験することができる
  • 症例報告や論文執筆のチャンスを得やすい
  • 研究と並行しながら研修ができる

などがあると思います。

一方で、医者の人数が多い分、経験できる症例数はどうしても少なくなってしまう傾向があります。また、給料も3つの中で最も低いことが多いです。都内で寮がなく、家族を養わなくてはならないというケースだと、生活がややキツくなることもあるかもしれません。

このような理由から、私の周りでは2年間とも大学病院で研修をするコースを選ぶ人は多くなかったです。

3. 後期研修

初期研修が終わると、自分の専門の診療科を決めて、その科の専門研修を行います。この専門研修は「後期研修」と呼ばれています。

医者の世界には「医局」と言う大学ごとのグループがあり、どこかの「医局」に所属してその関連病院に派遣されると言うのが一般的です。医局によって方針は違いますが、いろんな病院で幅広い疾患を経験するために、1-2年ごとに病院を移ることが多いです。

一方で、医局に所属せずに、自分で病院と契約して研修を行うパターンもあります。いずれにせよ、専門の診療科でトレーニングを行い、専門医資格の取得を目指します。

人によっては、後期研修の途中から大学院に通って博士号取得を目指します。開始時期は診療科やその人によってまちまちですし、場合によっては博士号を取得しないケースもあります。この頃になると、医者としてのキャリアは多様化してきます。

今回は医学部卒業後の進路についてまとめました。いかがだったでしょうか。

周りに医者がいないという方は、今回の記事を読むことで医学部卒業後の道筋が見えたのではないかと思います。少しでも参考になれば幸いです。

医学部や医者のキャリアなどで質問があれば、ぜひご連絡ください。

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そら
医師・研究者 | 妻(@yukizorablog_Y)と医師夫婦ブログを書いてます | 医療や教育に関する記事を残していこうと思っています。
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