ブログ発信と並行して、質問箱もまったり運営しています。
今までに1500件以上の質問に回答してきたわけですが(本音を言うと結構大変でした)、そこでいくつか思うことがあったので、一度記事にしてまとめてみようと思います。
ありがたいことにフォロワーさんも増えたので、1つの質問に回答すると3つの質問が新たに送られてくるような状況で、なかなか追いついていません。
今までは「さすがにこれは無いな」と思うもの以外は全てに回答してきたのですが、少し選定しようかなと考え始めています。
目次
1. 質問に答える時に意識していること
1. 個別の症状に対する診断はしない
診察をしないと、医師は診断や処方などが出来ません。これは”医師法”で定められていることです。
そのため、こういう症状の時の診断にはどういうものがありますか?と言われても、私は診断をくだすことは出来ませんし、行いません。
また、厚生労働省の定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で言及されている「遠隔健康医療相談」を逸脱するような助言はできません。
具体的に言うと、個別の症状に対して鑑別診断を挙げたり、経過観察を推奨したりすることはできません。
一般論としてお聞きされている場合については比較的お答えしやすいかと思いますが、「今、〜〜〜のような症状が出ているのですが・・・・」というような質問に対しては、具体的にお答えするのが難しいです。
2. 早急な回答は出来ないことを前提とする
申し訳ないのですが、質問箱に質問を頂いても、返答までにしばらくお時間を頂いています。
前述の通り、具体的な症状に対して可能性のある診断を挙げたり、経過観察を推奨したりすることできないのは大前提ですが、即回答が求められるような質問に対しても、適切なタイミングでの回答は出来ません。
・破水感がある場合、病院に受診した方が良いでしょうか?
・避妊に失敗してしまった場合、緊急避妊薬は内服した方が良いでしょうか? など
例えば上のような質問は、仮に早いタイミングでの回答を期待されていたとしても、それに応えるのは難しいです。
回答を急ぐ必要がある質問に私が気付けるかどうかも分かりませんし、例え気付いたとしても前述のように待っている方がたくさんいますので、優先して答えるようなことはしていません。
今症状があるという場合は、必ず病院に直接お問い合わせ下さい。
質問箱は私の日常業務の片手間に行っているものなので、そこはご了承頂けますと幸いです。
3. 医師にも色々な考えがあり正解は1つでは無い
医学にはガイドラインというものがあり、標準治療というものがあります。
ただ、「〇〇した方が良い」と治療方針が統一されているものもあれば、グレーゾーンが多く「Aの治療でもBの治療でもどちらも選択肢になり得る」という場合もあります。
また、その施設や地域・環境などによって、何を優先するかというものも異なってきますし、”担当医が〇〇に慣れている”とか”〇〇が好き”とか、そういうものも若干関わってきたりします。
つまり、医学や治療法の正解は1つとは限らないのです。
担当医と私の意見が異なることもあるかもしれませんが、
ふ〜ん。こんな意見もあるんだ〜。
程度に捉え、最終的には担当医と相談しながら治療を決めて下さいね。
2. こういう質問への回答は「分かりません」→直接担当医へ!
さて、せっかくのこの機に、質問箱では回答しかねる質問というものをまとめてみます。
今後、こういった質問への回答は避けていこうと思っています。無責任なことは言いたくないですし、総じて「分かりません」と言うしか出来ないことが多いからです。直接担当医に相談しましょう。
1. 「妊娠中に〇〇してしまいました、大丈夫ですか?」
大丈夫と言ってもらいたい気持ちは分かりますが、終わってしまったことはもう後悔しても仕方ありません。例えば生肉を食べてしまったとか、妊娠に気付かずに薬を飲んでしまったとかがこれに当たります。
私自身、大丈夫と言うことは出来ませんし、例え妊娠中にやって欲しくはなかったことであっても、「そうなんですね。何も起きないといいですね。」と言うしか出来ません。
質問箱で回答するだけでは、私が無力感に苛まれてしまって終わりなので、不安なことがあった場合は、必ず担当医にその旨を告げて下さい。
必要な検査や対応があれば、その病院で介入してくれることでしょう。
2. 「妊娠の可能性はありますか?」「確実な避妊は出来ますか?」
医師が医学生時代から繰り返し聞く提言の1つに『女性をみたら妊娠を疑え』があります。性行為がある段階で、妊娠の可能性はゼロではありません。
避妊に失敗してしまった!という場合は、気負わず産婦人科を受診いただければと思います。必要であれば緊急避妊薬などが勧められるだろうし、更に踏み入れば今後の避妊方法についての説明が入るでしょう。
また、既にピルを内服している人で、
フリウェルULD(ルナベルULD)は避妊効果がありますか?
という質問が多いのが気になっていました。
回答としては「避妊効果はあるけど、他のピルと比較すると劣る」になりますが、質問の意図が上手く汲み取れないと言うのが率直な心境です。患者さんの背景や希望が分からないからです。
どの程度の避妊を求めているのかとか、ピルを内服するに際に何を重視するのか(不正出血が気になる、ニキビが気になる、連続投与が良い…etc)などによってもピルの選択は変わってきますので、こういう質問こそ担当医に気軽に相談して貰いたいなと思います。
3. 「〇〇系のサプリや民間療法は意味がありますか?」
医学的に根拠のあるものについては意味があるとか無いとか言えるのですが、サプリや民間療法については根拠がないものが多いので「分かりません」になります。
私が積極的に推奨するのは”妊娠初期の葉酸補充”くらいでしょうか。それ以外のサプリメントについては絶対に内服した方が良いと思われるものはないかなと思います。
骨盤ベルトや会陰マッサージは、害はないしやっておいた方がメリットも多いかなと思いますが、骨盤矯正だったり逆子体操だったり、エビデンスの低いものも蔓延していたりするので、それを行うか否かは患者さんの意向にも多いに関わってくるのかなと考えます。
無碍に否定されるものではないですが、安易にネットの情報に踊らされず、担当医がどう考えているかを外来で聞いておくことは大切です。
3. インターネットの医療情報を信用しすぎてはいけない
今までつらつらと述べてきて、読者さんの中には
なんて曖昧なんだろう…。
と感じられた方がいらっしゃることと思います。
その通り。本当に、はっきりしないことが多いんです。
質問箱だけでなく、今やインターネット上には、医師が回答するQ&A形式のサイトだったり、何らかの製品をお勧めするようなサイトもあったりしますが、その情報を信頼しすぎるのはNGです。
私の質問箱の回答にも言えることですが、間違ったことを言っている可能性もありますし、一般論はそうだけどそれはその患者さんには当てはまらない、ということもあります。
ゆきぞらブログを読んでいる読者の方はネットリテラシーが高い方が多いので釈迦に説法だとは思いますが、こういった情報の曖昧さを理解した上で、そのものを信頼しすぎず、上手く利用する程度に留めておいた方が無難だと考えます。
診察しないで回答できることは限られています。
最終的なことは、必ず病院を受診して担当医と相談することが重要なのです。
4. 質問箱の上手な利用法とその効果
1. 病院を受診するきっかけになる
質問箱を開設して良かったなと思ったことの1つが、病院を受診するきっかけになった人がいるということです。
基本的に私は病院に繋ぐ架け橋のような役割でありたいと思っているので、
・こんな内容でも受診して良いんだということがわかって良かった。
・背中を押されて受診できました!
などのご意見があると嬉しい限りだなと感じます。
産婦人科はもっと女性に身近な科であるべきだと思っているので、そのハードルを少しでも下げるための役に立てたら本望ですね。
2. 1つの安心材料になる?
担当医だけでなく、他の医師がどう考えているのかを知れることが、患者さんにとっての1つの安心材料になるという人がいます。
担当医にはなかなか聞けなかったことだったり、担当医が何を考えてそういう選択をしたのかよく分かっていなかったという患者さんにとって、それを補強するような情報が入るとより理解が深まる、といったこともあるでしょう。
「敢えて担当医に聞くほどではなかったんだけど、ずっと気になっていたんだよね」という、痒いところに手が届く情報が提供できるのは、質問箱の魅力かなと感じます。
3. 読者の方と繋がれる
そして何より私が嬉しかったのが、ブログの読者の方やSNSのフォロワーさんと近い距離で接することが出来るということです。
嬉しい出産報告だったり、無事に手術が終わりました報告だったり、質問箱やブログを喜んでくれる方々の温かい言葉だったりに、私はたくさん救われています。
自分の存在意義を見出すために続けているというエゴな部分もあるのかもしれませんね。ゆきぞらブログや私の質問箱は、気軽に上手に有効活用して頂ければ幸いです。
今日は質問箱を続けながら考えていたメリット・デメリットについて言語化してみました。
なかなか難しい問題ですが、質問箱を設けていることをありがたいと言って下さる方もたくさんいらっしゃるので、その方々の温かいお言葉に支えてもらいつつ、頑張っていこうと思っています。
一体いつまで続くでしょうか。私にできる範囲でまったりやっていきたいです。
最後に、少しでも多くの方にこのブログをご覧いただけるよう、応援クリックよろしくお願いします!
こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。