今回は生理(=月経)についての記事です。
月経の話題って、それが例え親であってもなかなか話せなかったりしますよね。月経痛があったり、出血量が多かったりしても、他人と比べられず正常か異常か分かりにくいのも厄介です。
ただ、女性にとっては毎月くる事象です。
自分の月経について知っておくことはとても大切。今回は月経について詳しくお話しします。
目次
1. 現代の女性は月経回数が多すぎる
月経とは、「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的な出血」と定義されています。
月経を煩わしく思う女性は少なくないでしょう。ホルモンバランスが変わり、自分の精神的・身体的な変化をもたらすこともそうですが、何より性器出血している事そのものが面倒くさい。
さらに月経時にお腹が痛くなったり、出血量が多すぎて貧血になったりと、月経が日常生活に支障を及ぼす人もいます。
外来で、「月経って何のためにあるの?」と質問された際には、「子宮内膜のお掃除が目的です」とお答えしています。
子宮の内膜は毎月妊娠のための準備をします。受精卵を着床させるため、子宮の中にベッドを作り、ふかふかの布団を敷いて待っているわけです。
妊娠が成立せず、今周期は受精卵は来ないぞということが分かったら、次の周期の新しいベッド・布団を用意しようと、一旦古いものを壊します。
古いベッドと布団を壊すために子宮内膜が剥がれて出血すること、これが月経なのです。
現代の女性は社会進出・晩婚化・高齢妊娠の影響を受けて、月経回数がかなり多くなっています(一生で400回前後)。1人で4〜5人の子供を産んでいた時代の月経回数は50〜100回と言われているので、それと比較すると5〜10倍の月経を経験していることになります。
2. 月経に関わる2つのホルモン
月経に深く関わる2つのホルモンがありますので、ここで紹介します。両者を合わせて「女性ホルモン」と言います。
- エストロゲン(E)=卵胞ホルモン
- プロゲステロン(P)=黄体ホルモン
先ほどのベッド・布団の例えで言えば、
- ベッドを作るのがエストロゲン(E)
- 布団を敷くのがプロゲステロン(P)
です。月経周期では、下記のように作用しています。
- 卵巣で卵胞が作られる
- 卵胞がEを分泌する
- Eによって子宮内膜が増殖・肥厚する
- 排卵する
- 排卵した卵胞が黄体になり、Pを分泌する
- Pによって、子宮内膜を着床に適した状態にする
- 妊娠が成立しない場合、黄体が白体に変わる
- E・Pともに減少する
- 子宮内膜が剥がれ、排出される(=月経)
月経周期によって、この2つのホルモンが大きく変動しているのが分かるかと思います。月経前にイライラしたり、眠くなったり、お腹が痛くなったりするのはこのホルモンの作用によるものです。
3. 月経の正常値
月経の異常について知るためには、まず正常が何かを知ることが大切です。
- 月経周期:「25〜38日」かつ「その変動が6日以内」
- 持続期間:3〜7日
- 月経量:20〜140mL
初潮後約1年程度は、ホルモン分泌が未成熟で上記に当てはまらないことが多いです。また、50歳前後の閉経期にも月経異常をきたします。
この”思春期・更年期の月経異常”は生理的なものがほとんどで、基本的には大きな問題になりません。
一方、性成熟期にも関わらず異常が出る場合は、何らかの原因がないかを調べる必要があります。
4. 月経周期の異常
月経周期は「25〜38日周期」かつ「周期変動が6日以内」が正常です。
月経周期が短くなる・長くなる場合、どんな原因があるかをみていきましょう。
1. 頻発月経
<月経周期が24日以下になる原因>
・排卵障害(無排卵)
・黄体機能不全 など
無排卵の場合、プロゲステロンが分泌されないために子宮の内膜が育たず、破綻出血を起こして月経周期が短くなります。
注意が必要なのが、子宮の疾患による不正性器出血を月経だと思ってしまうこと。子宮内膜ポリープ、子宮体がん、子宮頚がんなどが隠されていないか、しっかりと鑑別する必要があります。
2. 奇発月経
<月経周期が39日以上になる原因>
・排卵障害(多嚢胞性卵胞症候群など)
・精神的なストレス
・体重の大幅な増減 など
逆に排卵が遅いと月経周期が延長します。精神的なエピソードの有無も重要になるので、生活習慣や体型の変化も含めてフォローしていきます。
一方、3ヶ月以上月経が来ない場合は「続発性無月経」といい、特別な評価が必要です。こちらも排卵障害が原因になっていることが多いのですが、血中ホルモンの測定などを行って排卵障害の鑑別をする必要があります。
月経が来ない…そんな時に見逃してはならないのが「妊娠」です。妊娠の可能性が否定できない場合は、必ず妊娠検査薬で評価しましょう。
5. 月経量・持続期間の異常
“月経量が多い・少ない”と、”月経が長い・短い”は随伴することが多く、同じ原因で起こっていることが多いと言われています。
1. 過多月経・過長月経
<月経量が多く長くなる原因>
・子宮筋腫
・子宮腺筋症
・子宮内膜ポリープ
・血液凝固障害 など
月経量が多くなる原因として、子宮に何らかの器質的な異常がある場合があります。子宮内膜近くの病変ほど、月経症状として現れてきやすい傾向にあります。
子宮内膜が剥がれて起きる出血が月経。すなわち、子宮内膜が伸ばされて表面積が大きくなると、その分だけ月経量が増えるのです。
外来でも、月経量が多く貧血を呈している症例をよく診ます。慢性的な貧血なので、ご本人の自覚症状としては「ちょっと疲れやすい」「息切れしやすい」程度であることも多いのですが、適切な治療によって貧血が改善すると、「こんなに楽なのか」とおっしゃる患者さんがほとんどです。
器質的な疾患は超音波などで評価ができるので、月経量が多くて困っている人は1回産婦人科に行ってみましょう。
2. 過少月経・過短月経
月経量が少なく短くなる原因は、子宮発育不全や子宮内膜炎の既往などが挙げられますが、頻度が少ないので割愛します。
「多い日用のナプキンが2〜3時間もたない」
「生理の出血が多くて夜も1〜2回起きないと間に合わない」
「血液の塊のようなものが出る」
「貧血症状が強い」
これらは月経量が多いサインです。
6. 月経困難症
最後に月経痛(月経困難症)のお話しをします。
月経直前または月経開始とともに、日常生活に支障をきたすほどの症状を呈し、治療を要するものを「月経困難症」と言います。
子宮や卵巣に何らかの異常がある場合もありますが、ない場合もあります。
月経困難症の症状としては、下記が代表的です。
- 下腹部痛
- 腰痛
- 腹部膨満感(お腹が張る)
- 吐き気
- 頭痛
日常生活に支障が出るほどの痛みやその他の症状がある場合は、気軽に産婦人科に相談してみてください。
月経痛は我慢する必要のないものです。鎮痛薬・低用量ピル・漢方薬など、様々な治療法がありますので、適切に介入しましょう。
たかが生理痛。されど生理痛。
お母さんや学校の先生に「ただの生理痛なのだから我慢しなさい」と言われ、これが普通なんだと思い込み、受診の機会を逃してしまった10〜20代の女性が多いことが問題になっています。
今日は月経についてお話ししました。
産婦人科の話題って、意外と自分ひとりで抱え込むことが多い印象がありますが、我慢する必要なんてありません。むしろ我慢したが故に将来の不妊や癌化につながってしまう症例もあります。
気軽に産婦人科医に相談できるようになるといいなと思いますし、そういう社会・環境にすべきだと感じています。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。