生理って煩わしいですよね。
生理が近づくとテンションも下がりますし、それが旅行や大会、試験などのイベントに重なると、より一層そう思うのではないかと思います。
ただ、実は生理の日は自由に移動が出来るってこと、ご存知ですか?
産婦人科に行けば、「この日は生理が来てほしくない」という要望を叶えることもできるのです。
今日はそんな月経移動について解説します。
目次
1. 月経を移動するには
月経移動に使われる薬は、女性ホルモンである“エストロゲン”と”プロゲステロン”の配合薬です。いわゆる「ピル」と言われる薬ですね。
ピルは、含まれているエストロゲンの量によって、
・50μg=中用量ピル
・30〜50μg=低用量ピル
・30μg以下=超低用量ピル
と区別がなされています。
一般的に、1回の月経移動の際に用いられるピルは中用量ピルが多いです。後述しますが、特に月経を”遅らせたい”場合は中用量ピルを用いることがほとんどかと思います。
ただ、月経調整の頻度が多かったり、それ以外の目的(月経痛の改善や避妊など)がある場合には、低用量ピルや超低用量ピルの定時内服が勧められることもあります。
ピルについては以前記事にしたので、以下の2つの記事もぜひ参考にしてみてください。
2. 月経を早める・遅らせる
まず、月経調整について考える際に前提となる大まかな考え方について理解しておきましょう。
・ピルを内服している間は月経が来ない
・ピルの内服をやめた後、1〜5日程度で出血が起きる
簡単ですね。
ピルの内服期間が長すぎると途中で出血が起きてしまうことがあったり、体質によってピルの内服をやめてから出血が起きるまで5日以上かかる人もいたりと、100%正確とは言い切れないのですが、概ね上手く調整できます。
①月経を早める
月経周期を短くするにはどうするか。
月経開始日をday1として、
day3〜day7から、ピルを10〜14日間内服すればOK。
例えばday5から10日間ピルを内服したとしましょう。
すると、ピルを内服し終わるのがday14になるので、その数日後に出血が来ます。
つまり3週間弱程度で次の出血が来ることになる(=月経を早めることが出来る)のです。
月経が来てからすぐにピルを飲むのがポイントになるので、月経周期を短くする場合には、月経が来たらすぐに産婦人科を予約して来院してもらう必要があります。
②月経を遅らせる
続いて月経周期を延長させる場合を考えていきましょう。
月経周期を短くする場合よりも確実性が高いと言われているので、病院によってはこちらの方法のみを採用しているケースもあります。
月経を遅らせる場合は、ピルを内服する時期を、排卵の前にするのか後にするのかによって、少し調整の仕方が変わってきます。
卵胞期(月経開始〜排卵前)の場合
卵胞期から内服する場合は、
月経を遅らせたい時期までピルの内服を継続すればOK。
ここまでは生理が来てほしくない、という日まで飲み忘れなく継続いただければ大丈夫ですが、ピルの内服期間が長くなりやすい分、ピルの副作用が生じるデメリットもあります。
黄体期(排卵後)の場合
黄体期から内服する場合は、
月経開始予定5〜7日前からピルを遅らせたい時期まで投与すればOK。
卵胞期から内服する場合と比べて、ピルの内服期間は短くなりますね。
ただ月経周期が不順で、自身の次の月経開始日がはっきりとわからない場合には、服用開始のタイミングが定まらず月経移動が上手くいかない可能性があります。
3. 具体例で見てみよう
最後に具体例をみてまとめていきます。
25歳女性。月経周期は28日・順。持続期間は6日間。
最終月経は5月1日から開始。
6月1日から5日まで旅行に行く予定であり、次の月経を移動させたくて5月2日に産婦人科を受診した。
この症例の場合は、次のようにピルを内服してもらうのが良いかと思います。
- 5月5日から5月19日までピルを内服させる(月経を早める方法)
- 5月23日から6月5日までピルを服用させる(月経を遅らせる方法:黄体期に内服する場合)
どうでしょう。理解できましたか?
カレンダーを使って考えるとわかりやすいかもしれません。
ちなみに月経移動は自費診療となり、費用は大体3000〜5000円程度。
大切なイベントを控えている方などは検討しても良いのかと思います。
4. まとめ
- 月経移動に用いられる薬は「エストロゲン・プロゲステロン配合薬(EP配合薬)」。
- 月経周期を短縮する場合には、月経周期の3〜7日目からEP配合薬を10〜14日間投与する。
- 月経周期を延長する場合には、
卵胞期ならEP配合薬を遅らせたい時期まで投与。
黄体期なら月経予定5〜7日目からEP配合薬を遅らせたい時期まで投与。 - “確実性”は早める場合よりも遅らせる場合の方が高い。
- 自費診療。料金は3000〜5000円程度。
今日は月経移動について解説しました。いかがだったでしょうか。
産婦人科として働いていると身近な月経移動ですが、自分が産婦人科になる前は、そもそもこんなことが出来るなんて知らなかった!というのが本音です。
ぜひ少しでも多くの方に知ってもらい、月経と上手くお付き合いしていく糧の1つになれたらなと感じます。
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こんにちは、ゆきです。
とある周産期施設で産婦人科医として働いています。