今日は避妊手術の1つ、卵管摘出術・卵管結紮術についてお話しします。
帝王切開時に行われることが最も多いと思いますので、今回はそちらに絞ってご説明させて頂きます。
目次
1. 永久的な避妊処置
医師側から卵管結紮術や卵管摘出術について提示されるケースで最も多いのは、第3子目以降の選択的帝王切開術が決まっている方だと思います。
次以降の出産を望んでいない場合、避妊手術として、帝王切開時に合わせて行うことが出来るのです。
帝王切開の手術時間に+10〜15分程度で施行でき、比較的安全・簡便な手技なので、避妊を望む場合に患者希望で追加することができます。
帝王切開を反復すると、それだけ子宮筋層の創部が薄くなり、子宮破裂のリスクが上昇しますので、子宮保護の側面も持ち合わせています。
しかし、卵管結紮術であれ、卵管摘出術であれ、基本的には永久的な避妊術となるため、後戻りは出来ません。
後述しますが、非外科的な避妊法もあるため、そちらの選択肢も十分に提示する必要があると考えます。
また、母体保護法第2章第3条に「不妊手術は本人と配偶者の同意で行える」と明記されていますので、本人だけでなく配偶者からの同意も必要となります。
2. 卵管結紮術の流れ
卵管結紮術はその名の通り、両側の卵管を結んで受精卵を通さないようにする手術です。
結紮方法には沢山の種類があります。
ただ単に結んでも、そこをかき分けて卵管が再開通したり、受精卵が通ってきたりしてしまうので、なんとか卵管の再開通を防ぐよう工夫して結紮しています。
どの手技も100%の避妊が得られるわけではなく、約0.4〜0.5%で妊娠してしまうことがありますので、注意が必要です。
今回は最もよく行われるUchida法についてお示しします。
- 卵管を覆っている膜(卵管漿膜)に生理食塩水を注入
- 卵管を露出する
- 卵管漿膜にメスで切開を入れる
- 卵管を剥離し、部分切除を行う
- 子宮側の卵管断端は内側に埋め込むように縫合する
- 卵管采側の断端は外側に出したまま縫合する
Uchida法のポイントは、卵管を部分的に切除した片方の断端を内側、もう片方の断端が外側になるように縫合することです。
Uchida法では、2万例以上行って妊娠例はなかったと報告されているので、卵管の再開通がしにくい有効な手技だと考えています。
3. 卵管摘出術の流れ
卵管を結紮しても再開通のリスクがあるなら、卵管を摘出してしまった方が良いのでは?と考えられる方がいらっしゃるかと思います。
ご指摘の通りで、避妊手術として卵管摘出術を行っている病院もあります。
私が働いている病院でも、第1選択は卵管摘出術です。
卵管を摘出するメリットはもう1つあって、それは卵巣癌のリスクを減らせるということです。
卵巣癌の中には、卵管采(卵管の外側端)から発生する種類のものがあるので、卵巣癌の発生母地を摘出しておけば、そのリスクを減らすことが出来ると考えられるのです。
Kerry Millsら1)は、卵管結紮術と卵管摘出術の2つで、出血量・入院期間・術後の合併症・感染症のリスクなどに差は無かったと報告しており、卵管摘出術は、卵管結紮による避妊手術と同様に安全で効果的で、卵巣癌のリスクを軽減するためには好ましい手技であると結論付けています。
4. それ以外の避妊方法
卵管結紮術・卵管摘出術とも、不可逆的な避妊法になります。そのため、その後は基本的に自然妊娠は望めなくなってしまいます。
人生には色々あるので、次の妊娠を希望する可能性が少しでも残っている人(例えば若年の方など)であれば、その他の選択肢を選ぶことが検討されます。
また、そもそも帝王切開を予定していない人であれば、手術を避けられるメリットを取り、非侵襲的な処置を第1選択とすることが多いでしょう。
女性の避妊法としては、具体的に下記のようなものが挙げられます。
- ピル(OC)の内服
- 薬物添加IUD(子宮内避妊具)
- ペッサリー など
避妊失敗率を表す指数として、パール指数というものがあります。
これは、「100人の女性がある避妊法を1年間用いた場合にどれくらいが妊娠するか」を示したもので、比較すると下記のようになります。
避妊法 | 理想的な使用(%) | 一般的な使用(%) | 1年間の継続率 |
---|---|---|---|
女性避妊手術 | 0.5 | 0.5 | 100 |
ピル(OC) | 0.3 | 8 | 68 |
薬物添加IUD | 0.1〜0.6 | 0.1〜0.8 | 78〜81 |
ペッサリー | 6 | 16 | 57 |
コンドーム | 2 | 15 | 53 |
避妊なし | 85 | 85 |
女性避妊手術と同レベルの避妊効果が、ピルや子宮内避妊具でも得られることが分かりますね。
患者さんにあった避妊法を選択するのも産婦人科診療の大切なポイントの1つだと思っているので、気軽に聞いてもらえたらなと思います。
いかがだったでしょうか。今日は外科的手術をメインとして、女性の避妊法について説明しました。
色々な選択肢があることを知った上で、自分のライフスタイルにあったものを選択出来ると良いのかなと思います。
ベストな選択肢は患者さん毎に違うと思うので、ぜひ相談してみてください。
最後に、少しでも多くの方にこのブログをご覧いただけるよう、応援クリックよろしくお願いします!
こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。