2020年1月にプロウペス®︎腟用剤10mg(ジノプロストン腟内留置用製剤;以下、プロウペス)という頚管熟化剤が国内承認を得ました。
日本で最も新しい誘発剤です。実に20年以上ぶりだそうで、私が勤務している病院でも夏頃から使用を開始しています。
最近は導入する病院も増えてきていると思うので、中には既に経験された妊婦さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はこのプロウペスについて解説していきます。
目次
1. プロウペスはPGE2の腟剤
プロウペス®︎:
ジノプロストン腟内留置用製剤
効果:妊娠37週以降の子宮頚管熟化不全における熟化の促進
以前、分娩誘発・陣痛促進に関する記事を書きました。
プロウペスを自施設で使用してすぐだったので、プロウペスについては補足程度の記載にとどめ、下記3つの誘発剤と子宮頚管を拡張する処置についてお話ししています。
- オキシトシン(点滴)
- プロスタグランジンF2α(点滴);PGF2α
- プロスタグランジンE2錠(内服);PGE2
ざっと簡単にまとめると、オキシトシンのイメージは「子宮収縮作用が強い」。プロスタグランジンのイメージは「頚管熟化作用が強い」です。
さて、プロウペスとは何かというと、腟内に留置するプロスタグランジン(PGE2)製剤になります。
今までプロスタグランジンには内服か点滴かしかありませんでしたが、腟内に入れて子宮に限局的に効果を及ぼす選択肢が加わったのです。
プロウペスは、PGE2の含まれている円盤状の部分と、使用後に取り出すための紐状の部分から構成されています。腟の奥の子宮頚管のそばに留置することで、プロスタグランジンがゆっくりと放出されて作用します。
2. Bishopスコア
- 9点以上:子宮頚管成熟
- 8点以上:分娩が成功する確率が高い
- 4点以下:子宮頚管未成熟
子宮頚管の熟化を評価する指標として、Bishopスコア(ビショップスコア)があります1)。
- 子宮口開大度:子宮口がどれくらい開いているか
- 頚管展退度:子宮がどれくらい薄くなってきているか
- 児頭の位置:赤ちゃんの頭が骨盤のどの位置にあるか
- 子宮頚管の硬度:子宮頚管のやわらかさ
- 子宮口の位置:子宮口がどちらを向いているか
この5項目について、それぞれ0〜3点で点数づけ(満点:13点)しています。
頚管が十分に熟化していないうちに子宮収縮薬による分娩誘発を行った場合、分娩誘発が成功しにくいことが報告されていますので、プロウペスなどで頚管を熟化させることが経腟分娩成功の1つの鍵になるのです。
子宮の出口がカッチリ閉じている状態では、いくら子宮を収縮させても、うまく分娩にならないことが多いです。
そのため、頚管熟化をいかに促していくかもポイントになります。
3. プロウペスの対象となる妊婦は?
プロウペスの適応は、妊娠37週以降の子宮頚管熟化不全の妊婦です。
使ってはいけない人、及び慎重投与の人がいるので、必ずそれらの項目に当てはまらないかを調べます。
禁忌例の一覧は下記のとおりです。
- すでに陣痛が開始している人
- 子宮の手術歴がある人(帝王切開や筋腫核出術など)
- 子宮破裂の既往がある人
- 胎児機能不全がある人
- 前置胎盤のある人
- 常位胎盤早期剥離の徴候がある人
- 児頭骨盤不均衡(児頭が骨盤よりも大きい)がある人
- 胎位異常がある人
- 他の子宮収縮薬を投与中の人
- 頚管拡張材を使用中の人
- PGE2に対してアレルギー歴のある人
プロウペスはあくまでも子宮頚管の熟化が悪い人が対象です。すでに陣痛が始まっているような人に対しては適応となりません。
さらに、子宮手術の既往があったり、前置胎盤や骨盤位など元々帝王切開での分娩が予定されているような人にも使用してはいけません。
また、ラミナリアやミニメトロなどの頚管拡張材や、オキシトシンなどの他の子宮収縮薬との同時併用も認められていません。
必要時は必ずプロウペスを取り出してから、別の誘発・促進剤を使用することになります。
一方、慎重投与例としては次のようなものが挙げられます。
- 前期破水
- 過強陣痛
- 緑内障またはその既往
- 気管支喘息またはその既往
- 多胎妊娠
- 4回以上の分娩歴がある人
緑内障・気管支喘息などがある人は、点滴や内服のプロスタグランジンは投与禁忌でしたが、プロウペスについては慎重投与の位置づけになります。
また、前期破水(陣痛の前に破水すること)の場合も、プロウペスを使用するかどうかは施設判断です。
私の働いている施設では、今までミニメトロで頚管拡張をしていたような症例に対して、プロウペスでの頚管熟化を図っています。
4. 投与方法・管理は?
プロウペスは入院下で使用し、産婦人科医が留置を行います。
円盤状の部分が子宮頚管のそばにしっかりと位置するように挿入し、取り出し用の紐は腟から少しはみ出たような状態にします。
プロウペスを入れた直後30分間は安静にしてもらいますが、それ以降はトイレなどに歩く程度であれば可能です。ただ、トイレの際にプロウペスが抜け落ちたりしないかは常に確認して頂きます。
プロウペスを挿入している間は、常に胎児心拍数陣痛図を装着して赤ちゃんに具合が悪いサインが出ないか、子宮収縮の程度はどのくらいか、などを評価します。
5. どういう時に抜くの?
下記の場合は速やかにプロウペスを取り除く必要があります。
- 3分間隔の痛みを伴う規則的な子宮収縮がある時(陣発が疑われる時)
- 過強陣痛
- 胎動を感じない
- プロウペス投与後に破水した場合
- 吐き気や低血圧など全身性の副作用を生じた時
- プロウペス投与後12時間経過した時
陣痛・破水が起きたり、プロウペスによる子宮収縮作用が強く出て赤ちゃんのモニターに元気がなくなった時などは抜去適応です。
プロウペスの作用が挿入後何時間くらいで現れるかは、個人差が非常に大きいのですが、薬効の持続時間は12時間とされているので、12時間経過した場合も取り出す必要があります。
いかがだったでしょうか。
待望のPGE2腟用製剤であるプロウペス。まだ臨床応用となってから期間は浅いですが、これからどんどん使用機会が増えてくるかと思います。
少しでも知識の補填のお役に立てれば幸いです。これからもゆきぞらブログをよろしくお願いします!
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。