こんな質問を頂きました。
私はあまり物欲がないタイプなので、最初の頃の給料のほとんどは書籍を買うことに使っていました。上級医に少しでもお勧めされたら、すぐに購入してさらっと読んで、本棚に並べて嬉しくなって。
そんなわけで、お勧めしたい産婦人科関連の本は沢山あります。
ただ今回は「初期研修医・産婦人科専攻医1年目」とのことなので、
産婦人科研修をスタートする上で、まずはここから取り掛かるのが抵抗なくて良いかも?
と思う書籍を10冊、独断と偏見で選んでみました。
また、この10冊にはいれていませんが、「各種ガイドライン」及び「産婦人科専門医のための必修知識 2020年度版」は早めの購入をお勧めします。
目次
1. これから始める!周産期超音波の見かた
外来デビューは妊婦健診から、としている研修施設は多いのではないでしょうか。円滑に妊婦健診を回すためには、最低限のエコーの知識を入れておかないといけません。
この本では、胎児の推定体重の出し方や羊水量・血流の測定方法の基礎となる知識が豊富に掲載されています。
2〜3時間程度で読み終わる良い意味でのボリュームの少なさと、オールカラーでとても見やすくイメージがしやすいのがポイントです。
2. 胎児心エコー診断へのアプローチ
推定体重・羊水・血流あたりの理解が整理できたら、赤ちゃんの心臓をみたくなってくるはずです。
先天性心疾患をできる限り見逃さない、というのは産婦人科研修の1つの目標の1つでもある気がします。
“成書をみても難しくてよく分からない”、”知識が頭をすり抜けてしまう”、”カルテに記載されている略語が分からない”…という人に、1度さらっと読んでみて欲しい本。
先天性心疾患に苦手意識があった私も、この本を読んで世界がちょっと変わりました。
“正常とは何か”を理解し、異常な心臓を見た時に違和感を覚えるための知識が身に付く本。
その後に読む胎児心エコーの書籍の理解度も、格段に上がると思います。
3. 図説 CTGテキスト
胎児心拍数陣痛図(CTG)には大まかに4つの徐脈があります。
下の記事でも解説していますが、
- 早発一過性徐脈(ED)
- 遅発一過性徐脈(LD)
- 変動一過性徐脈(VD)
- 遷延一過性徐脈(PD)
でした。
ただ、実際の臨床現場ではなかなかそう簡単にはいきません。
波形の分類は同じでも、「待てる波形」と「今すぐ分娩にしないといけない波形」があるのです。
1つの判断ミスが赤ちゃんの予後に関わるかもしれない出産を扱う以上、CTGモニターから多くの情報を抽出することが大切。
この本を読めばCTGの基本とその仕組みが理解できるため、自分の下した判断の根拠を説明できるようになります。
分量もちょうどよく、週末にさらっと読み終えられる程度。これをマスターした後は、姉妹本として「図説 CTGテキスト アドバンス」もあるので、レベル別に楽しむことも出来ます。
4. 国立成育医療研究センター 産科実践ガイド
一定期間勤務するとわかりますが、必ずしもガイドラインで推奨されている通りの治療が行われていないことがあります。
例えば、切迫早産に対する子宮収縮抑制薬。その施設が扱える週数や患者層などによって、いつまで・どのくらいの量で使用するかは病院ごとに少しずつ違うのです。
だとすれば、他の施設はどうしているんだろう、と比較してみたくなりませんか?
そんな時に私が読んだのがこの本。
EBMに基づいて国立成育医療研究センターが定めた”サマリー”がまとめられています。
実際の医療現場に即した治療方針が垣間見えるので、非常に実践的に使用出来ます。
5. 産婦人科手術スタンダード
産婦人科には様々な手術本があります。
有名所だと、「OGS nowシリーズ」や「臨床解剖学に基づいた産婦人科手術シリーズ」などでしょうか。
これらもとても素晴らしく、今でも手術前に何度も見返していますが、唯一の欠点は”全部集めるとなると相当の書籍代がかかる“ということ。
そんなわけで、まず買う1冊としてお勧めなのは、こちらの”産婦人科手術スタンダード”かなと思っています。
産婦人科の代表的な術式が、これ1冊にぎゅっと濃縮してまとめられているので、手術の大まかな流れや雰囲気を感じるのには十分です(十分すぎるくらいです)。そう考えれば、お値段もすごくお手頃だと思います。
産婦人科専攻1年目の時は、時間が少しでも空けば手術室に行き、この本と術野を交互に照らし合わせながら見学していたな、なんて思い出しました。
6. 誰も教えてくれなかった婦人科がん薬物療法
いつか、がん患者さんを受け持たせてもらう日が来るでしょう。その時に備えて、婦人科の代表的な化学療法を勉強しておくのは大切。
そんな時はこちらの本を、まず一読することをお勧めします。
代表的な化学療法が網羅されているだけでなく、”どれだけの時間をかけて投薬するのか?”、”どの時期にどんな副作用が出やすいか?”など、細かい疑問への答えが非常にわかりやすくまとまっており、患者さんへの説明時にも非常に重宝しました。
投与量の計算方法やレジメンについてなど、これからの土台になる大切な”基本”についても、自然と身につけてくれるように構成されています。
7. 女性内分泌クリニカルクエスチョン90
内分泌系は、意外ととっかかりづらい分野の1つではないかと思います。
その人の年齢や社会背景・合併症などによって、治療の選択肢も多数あることが多いです。
患者さんからもバリエーションに富んだ質問を受けることが多く、どちらが良いんだ…と頭を悩ませることも少なくはありません。
その答えを考えるにあたって、私はこちらの本をかなり参考にしていました。
Q&A形式で構成されており、そこが知りたかった!という、痒いところに手が届くようなAnswerが沢山盛り込まれています。
患者さんの質問に答える際、エビデンスを踏まえて自信を持って説明できる安心感がありました。
8. 産婦人科の画像診断
産婦人科の画像関連の本といえばこちら。
これ1冊で産婦人科の画像のほとんどは網羅できるのではないかと思っています。
ただ単に画像を解説するだけではなく、その疾患の背景や疫学なども併せて記載しているため、疾患の理解を深められるメリットがあります。
なかなか分厚い本なので通読するのは気力がいりますが、最初にさらっと読んでから、以降は辞書がわりに活用するのが良いのかなと思っています。
9. 産婦人科外来処方マニュアル
白衣のポケットに忍ばせておくと何かと便利なのが、こちらのマニュアル。持ち運びやすい大きさです。
妊婦さんの風邪には何を出す?ホルモン治療ってどうやれば良い?
そんな外来でのふとした疑問が、さらっと解決出来ます。
とりあえずここに書いてある処方をすれば間違いはない、と安心できるのもよかったです。
私はこのマニュアルに、自施設で用いている使用法や新しい薬などを適宜書き加え、自分なりに日々アップデートしながら今でもよく活用しています。
10. 母乳とくすりハンドブック
最後にお勧めするのは、こちらの”母乳とくすりハンドブック”です。大分県薬剤師会が発行しているもので、Amazonでは売っていません。
産婦人科の勤務中、他科・他院から時々問い合わせがあるのが「授乳婦の患者さんなんですがこの薬って飲み続けても良いんですか?」というもの。
そんな時にこちらを見れば、授乳婦や乳児にとってどんなリスクがどの程度あるかが、○△×形式で分かりやすくまとまっているのです。
薬剤のカバー範囲の広さもそうですが、何より1冊1,500円と、かなり安く購入出来るのがポイント。ありがたい限りです。
産婦人科の研修をスタートするにあたり、まず最初に読む”おすすめ10選”を紹介してみました。これらの本は今でも反復して読むことが多く、よく助けられています。
自分の基礎を作ってくれた本かなと思っているので、どれも思いやりがあります。ぜひ興味があるものをピックアップして読んでみてください。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。