産婦人科の診察や婦人科健診で、「ポリープがあるね」と言われたことがある人は、案外多いと思います。というのも、この疾患はまれなものではなく、30〜60歳代に好発するありふれた疾患だからです。
ただ、頻度の高い疾患だからこそ、医療者側からの説明はおざなりになりがちかもしれません。今日はそんなポリープについて、できる部位ごとに2種類に分けて解説していきます。
目次
1. ポリープって何?
ポリープとは、その部位の組織が異常増殖して隆起性病変を形成することによる良性腫瘍のことです。
滴状だったり、単なる隆起性病変だったりとして認められます。
無症状のことも多く、健診や外来で偶然見つかることも多いですが、下記のような症状で見つかることもあります。
- 不正性器出血(月経時以外にも出血が出る)
- 過長月経・過多月経(月経量が多い・長い)
- 不妊症
逆に、これらの症状を認めるような場合は、ポリープ病変がないかをしっかり評価する必要があると言えます。
2. 子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮頸部の上皮粘膜が増殖して発生した良性腫瘍です。慢性的な炎症や、高エストロゲン状態によって生じると考えられています。
頻度は婦人科疾患の約4%。
30〜60歳代の女性、特に多産婦に多くみられます。
どうやって診断するの?
基本的には、腟鏡診で肉眼的にみて診断します。
診察の器械をかけると、子宮頸部に有茎性の小さな腫瘤が認められることがあります。表面が平滑でプリッとしており、大きさが数mm〜1cm程度であれば、大体は頸管ポリープです。
前述の通り、ほとんどは無症状のことが多いのですが、例えば性交渉などで物理的に刺激が入った時に出血したり、病変に感染を併発するとおりものに変化が見られたりもします。
基本的には良性ですが、約0.1%に悪性を認めたとの報告もあるため、子宮頸部細胞診で評価したり、ポリープを切除して病理学的に評価することも大切であると考えられます。
どうやって治療するの?
ゆっくり回転させて引き抜く”捻除術”がよく行われます。
子宮頸管ポリープの治療としては、ペアン鉗子と呼ばれる器械などを使ってポリープをつかみ、一方向にゆっくり回転させて引き抜く”捻除術“がよく行われます。
茎が細ければ簡単に取れるので、外来でも治療が可能です(数秒程度ですし痛みもほとんどありません)。
一方、茎の部分が太かったり、サイズが大きなポリープの場合は、麻酔を用いて手術室で切除術を行います。この場合でも10分前後の手術になるかと思います。
ポリープの起始部がよく分からない病変の時は、子宮鏡を用いて確認しながら手術を行うこともあります。
しっかり摘出できても再発のリスクがあるため、定期的な検診を続けてもらいながらフォローします。
妊娠中に頸管ポリープを指摘された時は?
週数や症状によって管理方法を検討します。
しばしば、妊娠中に頸管ポリープが見つかることもあります。
妊娠中の頸管ポリープは案外厄介で、
- 切迫流早産
- 絨毛膜羊膜炎
などのリスクを高める原因になったりもします。
「じゃあとれば良いのか!」というとそう簡単ではなく、子宮内膜から連続する脱落膜ポリープの場合、切除すると逆にリスクを高めてしまったりするとも言われています。
したがって、性器出血や炎症などの症状や、悪性所見が強い場合を除いて、経過観察とすることの方が多いかもしれません。
切除が必要な時は、脱落膜ポリープの可能性について評価した上、予防的に抗生剤を投与して感染制御に努めることが重要です。
3. 子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープは、子宮内膜組織の一部が異常増殖して子宮の内腔に突出する形で隆起性病変を呈した良性腫瘍です。
こちらもありふれた疾患で、40〜50歳代に好発します。閉経後にも比較的多いとされています。
病変は80%が単発、20%が多発。頸管ポリープと異なり、茎が細長くあるものだけでなく、幅広くモコモコしている病変も多いです。
症状のメインは不正性器出血などの月経症状、そして不妊症。子宮内膜に邪魔なものがあることで、着床の妨げになってしまうのです。
どうやって診断するの?
主にはエコーや子宮鏡検査で診断します。
子宮内膜ポリープは子宮の中の病変なので、子宮頸管ポリープと違い、器械をかければすぐに肉眼的に視認できるものではありません。
そのため、エコーで怪しい病変を見つけた際には、下記のイラストのような子宮鏡検査を行って診断をつけることが多いです。
子宮鏡検査では、子宮の中に細長いカメラを挿入し、子宮内を隅々まで観察します。ポリープがあるのか、ある場合はどの位置にどういう病変が何個あるのか、しっかりと評価していきます。
子宮鏡ではなく、子宮腔内に生理食塩水という水を満たしてからエコー検査を行う、Sonohysterography(SHG)を行う場合もあります。
SHGも、子宮鏡とほぼ同等の診断精度があると報告されています。
どういう場合に治療するの?
①症状がある場合
②悪性の可能性がある場合
③不妊症の原因になっている場合
は治療適応です。
子宮内膜ポリープによる症状に悩まされていたり、子宮内膜細胞診などで悪性を疑う所見があったり、不妊の原因になったりしていた場合は、治療適応になります。
特に『閉経後』『1.5cm以上のサイズ』『タモキシフェン(乳がん治療薬)の使用』などは悪性のリスク因子になると考えられているため、積極的な治療介入を検討します。
治療は検査と同様に子宮鏡を用いて、子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術を行うことがほとんどでしょう。
一方、治療の必要がない子宮内膜ポリープは経過観察が可能です。1cm未満のポリープは自然退縮する傾向が強いですし、多発している場合はホルモンを調節する薬を用いて病変をきれいにすることも出来ます。
しかし、病変が縮小あるいは治療で切除したとしても、頸管ポリープ同様再発のリスクも高いため、定期的なフォローは必要とされます。
いかがだったでしょうか。
今日は良性病変の”ポリープ”について解説して見ました。
婦人科の外来をやっていると、かなりありふれた疾患であることが分かります。多くは無症状かつ経過観察可能ですが、治療介入が必要な症例もあり、再発リスクも高いため、しっかりと外来でフォローしていくことが重要です。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。