子宮頚がん検診、皆さん受けていますか?
お知らせが来ていながら、なかなか足を運んでいない人も多いのではないでしょうか。
婦人科の診察に抵抗がある人も多いと思うのですが、子宮頚がんは20〜30歳代の患者数が増加傾向です。検診で早期発見が出来るので、必ず受診しましょう。
さて、今回は婦人科検診で必ず行う子宮頚部細胞診についてです。
子宮頚部細胞診の結果の見方と、異常が出た時の取り扱いについてまとめてみようと思います。
目次
1. 子宮頚部細胞診の結果一覧
婦人科検診では、上のイラストのように子宮頚部(子宮の出入り口の所)を擦って細胞を採取しています。採取した検体を病理の先生に診断してもらい、細胞の異型度を評価しているのです。
2週間くらいで結果が返ってくるかと思いますが、何やらアルファベットが並んでいるだけでよく分からなかったという方が多いのではないでしょうか。
ここでは一体どんな種類の結果があるのか、一覧にしてお示しします。
<ベセスダシステム:扁平上皮系>
- NILM:陰性
- ASC-US:意義不明な異型扁平上皮細胞
- ASC-H:HSILを除外出来ない異型扁平上皮細胞
- LSIL:軽度扁平上皮内病変
- HSIL:高度扁平上皮内病変
- SCC:扁平上皮癌
<ベセスダシステム:腺細胞系>
- AGC:異型腺細胞
- AIS:上皮内腺癌
- Adenocarcinoma:腺癌
- Other malig.:その他の悪性腫瘍
扁平上皮系における大雑把なイメージは
NILM(ニルム)→LSIL(エルシルorローシル)→HSIL(エイチシルorハイシル)となるにつれ、徐々にHPV感染による細胞変化が強くなり、SCC(=がん)への移行リスクが高いことを表す。
です。更に、
- ASC-US:LSILまではいかないけど、それに近い異常がある病変
- ASC-H:HSILが否定出来ないけど確定も出来ない病変
というように覚えておくと、理解しやすいかもしれません。
良ければ、この記事の「2. 婦人科検診を受けよう」も参考にして下さい。
2. 検診結果に応じた対応は?
1. NILM
NILM:Negative for intraepithelial lesion or malignancy
婦人科検診の結果が「NILM, Class1」あるいは「NILM, Class2」であれば、結果は異常なしということです。
次は2年後に定期検診を受ければ大丈夫です。
2. LSIL, HSIL, ASC-H
- LSIL:Low grade squamous intraepithelial lesion
- HSIL:High grade squamous intraepithelial lesion
- ASC-H:Atypical squamous cells cannot exclude HSIL
上記3つの場合は、直ちにコルポスコピーという精密検査が必要です。
コルポスコピーとは、腟や子宮の表面を拡大して観察する顕微鏡のことで、上の写真で女医が覗き込んでいる白い機械がそうです。病変を6〜40倍に拡大して観察できるので、肉眼では見られない細かい病変も発見することができます。
LSIL以上であればコルポスコピーで精査をし、怪しい病変をつまんでとってくるパンチ生検を行います。
ただし若年・妊婦の場合は、下記のように例外として対応します。
- 24歳以下のLSILではコルポ診は不要。1年後の細胞診再検で良い。
- 25歳以上の妊婦のLSILでは出産後までのコルポ診の延期が許容される。
①については、若年者は「5年以内に治療を要する異形成に発展するリスクが他の年齢層と比べて低い」からです。
②については、妊婦さんの子宮は大きく柔らかくなっているため、「生検をした際の出血リスクが高い」ことを考慮してです。その出血で流早産につながる可能性も否定はできず、LSIL以下の病変であれば生検は見送ります(観察のみを行うことはあります)。
ただ、若年者・妊婦であっても、HSILやASC-Hの場合はコルポスコピーが必要です。
3. ASC-US
ASC-US:Atypical squamous cells of undermined significance
ASC-USは「意義不明な異型扁平上皮細胞」と訳され、軽度な異型はあるけどLSILの診断基準は満たさないものを指します。
ASC-USが出たら、まずハイリスクHPV(ヒトパピローマウイルス)の有無を調べる検査を行います。
① ハイリスクHPVって何のために調べるの?
子宮扁平上皮癌の99.7%に高リスクのHPVが検出されています。
そしてASC-USでも、50%程度にハイリスクHPVが検出されます。
HPVに感染しても多くは自身の免疫力でウイルスを排除できるのですが、感染が持続すると子宮頚がんに進行してしまいます(上イラスト参照)。
HPVがいるかいないかで、検査結果の判定の意味合いが少し変わってくるのです。
② ハイリスクHPV陽性の場合
ハイリスクHPV検査で陽性だった場合は、LSILと同様に扱います。つまり、コルポスコピーでの精密検査を行うのです。
ASC-US+HPV陽性例も、24歳以下の若年者に対しては、例外的に1年後の細胞診再検で良いと決められています。妊婦に対しても、出産後までのコルポスコピーの延期が許されます。
③ ハイリスクHPV陰性の場合
ハイリスクHPVが陰性だった場合は、1年後の細胞診の再検で良いです。
1年間でどんどん進行する病態ではないので、しっかりと定期的な検査を続けていれば、心配しすぎる必要はありません。
④ ハイリスクHPVを施行しない場合
何らかの理由でハイリスクHPVを施行できない場合は、
- ただちにコルポスコピーを実施する
- 6ヶ月後と1年後の2回で細胞診を実施する
の2つの選択肢があります。
②の場合は、6ヶ月後・1年後のどちらも陰性(NILM)であれば通常の検診間隔に戻し、どちらか一方でもASC以上であればコルポスコピーを行うことが定められています。
4. AGC, AIS
- AGC:Atypical glandular cells
- AIS:Adenocarcinoma in situ
AGC, AISは今まで述べていた「扁平上皮系」ではなく、「腺細胞系」の異常です。
AGCは異型腺細胞と訳され、腺に異型があるけれどもAISとするには弱いもの、あるいは腺癌が疑われるが断定できないもの、の2つの意味が含まれます。
こちらの場合も、まずは直ちにコルポスコピーでの精査が必要です。更に、腺細胞系の異常の場合は、子宮内膜組織診を追加することもあります。
5. SCC, Adenocarcinoma, Other malig.
- SCC:Squamous cell carcinoma
- Adenocarcinoma
- Other malignancy
上記の3つは、簡単に言えば「がん」の診断がついたということです。
そのため、コルポスコピーでの局所的な精査ではなく、CT・MRI・腫瘍マーカーを含めた採血など、全身精査を速やかに行い、出来るだけ早く治療につなげる必要があります。
3. コルポスコピー生検でわかること
- CIN1(軽度):異型細胞は下1/3の層におさまる
- CIN2(中等度):異型細胞が下1/3〜2/3を占める
- CIN3(高度):異型細胞が2/3以上〜全層を占める
精査が必要と判断された症例では、コルポスコピー検査を行うとお伝えしました。コルポスコピーでは、子宮頚部の細胞がどの程度変化しているかを調べています。
子宮頚部異形成のことをCIN(cervical intraepithelial neoplasia)と言いますが、CINには「CIN1(軽度異形成)・CIN2(中等度異形成)・CIN3(高度異形成)」の3つの区分があります。
イラストでお示しした通り、異型細胞の占める範囲によって病変の強さをレベル分けしているのです。
コルポスコピーで調べることは、
- 子宮頚部に異常があるのか
- あったとしたら、CIN1〜3のどの程度なのか
- 浸潤がんの可能性はないか
です。
CIN1〜3はそれぞれ治療法や診察間隔が異なり、それが妊娠・出産にも関わる可能性があるのですが、内容が盛り沢山で語ると長くなりそうなので、次回の記事に持ち越そうと思います。
婦人科検診で結果が出た際の対応方法についてお示ししました。
いずれにせよ、産婦人科医から適した時期でのフォローを提示されると思うので、言われた通りに受診すれば心配はいりません。
ただ、長期間のフォローが必要であるため、慣れてきた頃についつい診察を疎かにしてしまったり、検診間隔をあけてしまう人がいるのも事実です。
子宮頚がんは前がん病変から、十数年の時をかけて徐々に進行していくことが多いと考えられています。みんなで声をかけ合いながら、しっかり婦人科検診を受けて予防に努めましょう。
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こんにちは、ゆきです。産婦人科医として働いています。